初稿置き場
2026/02/01 14:33:38
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 10
ルベルトの言った「旅行」というのは、なんのことはない。ただの視察で、ユリスにも彼の側近として付いて来てほしい、というだけの話――だと、聞かされていた。
それが――
「俺と貴方だけっで、どういうことですか……!?」
蓋を開けてみると、その「視察」というのは三日ではなく三週間。その上、行き帰りに帯同する護衛を除けば、殆ど二人きりで過ごす予定らしい。
「いやぁ、お前にバレないかとひやひやした甲斐があったな!」
悪びれもせず笑うルベルトに、怒りが湧く。
「それに、三週間なんて聞いてません! そんな長期だなんて……」
三日なら、と思ってい彼に付き添うことを了承したが、三週間となると、確実に発情期と重なってしまう。だが、そのことをはっきり言うことが躊躇われて口籠ると、ルベルトがぐっと近付いて、耳元で囁く。
「発情期に入ることを気にしてるんだろう?」
「……っ」
「だから、三週間にしたんだ。それに、『三日」とでも言っておかないと、お前は了承してくれなかったろ?」
「あっ、貴方という人は……! お――私は、貴方の番にはならない、と言って……」
「だが今は、私の番だ。違うか?」
「っ――」
ユリスは上がりそうになる体温を無視しながら、どうにか今からでも引き返せやしないかと、頭を巡らせる。
「ですがっ、公式には違うでしょう! 男二人……アルファの男二人きりで三週間も過ごすなんて、どう思われるか!」
「ああ、そこは抜かりないぞ。『突然、発情誘発剤なんてものをかけられて傷心の王太子殿下は、暫く女もオメガもいないところで過ごしたい。ゆえに、最も心を許している側近のみ連れて、しばらく王都をお離れになった』――という噂が広まってる頃だから」
「っ!? ~~こ、このっ、腹黒――っ!!」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてない!!」
いっそう近付いてくるルベルトの胸を押し返そうとするが、抵抗も空しく、ユリスは彼に手を取られて、優しく指にキスをされた。
「誰が何と言おうと、お前は私の大事な番だよ」
「っ――」
嬉しい。嬉しくて堪らないその言葉が、自身をそれほど傷付ける言葉になるなんて、ユリスははじめて思い知ったのだった。
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 10
ルベルトの言った「旅行」というのは、なんのことはない。ただの視察で、ユリスにも彼の側近として付いて来てほしい、というだけの話――だと、聞かされていた。
それが――
「俺と貴方だけっで、どういうことですか……!?」
蓋を開けてみると、その「視察」というのは三日ではなく三週間。その上、行き帰りに帯同する護衛を除けば、殆ど二人きりで過ごす予定らしい。
「いやぁ、お前にバレないかとひやひやした甲斐があったな!」
悪びれもせず笑うルベルトに、怒りが湧く。
「それに、三週間なんて聞いてません! そんな長期だなんて……」
三日なら、と思ってい彼に付き添うことを了承したが、三週間となると、確実に発情期と重なってしまう。だが、そのことをはっきり言うことが躊躇われて口籠ると、ルベルトがぐっと近付いて、耳元で囁く。
「発情期に入ることを気にしてるんだろう?」
「……っ」
「だから、三週間にしたんだ。それに、『三日」とでも言っておかないと、お前は了承してくれなかったろ?」
「あっ、貴方という人は……! お――私は、貴方の番にはならない、と言って……」
「だが今は、私の番だ。違うか?」
「っ――」
ユリスは上がりそうになる体温を無視しながら、どうにか今からでも引き返せやしないかと、頭を巡らせる。
「ですがっ、公式には違うでしょう! 男二人……アルファの男二人きりで三週間も過ごすなんて、どう思われるか!」
「ああ、そこは抜かりないぞ。『突然、発情誘発剤なんてものをかけられて傷心の王太子殿下は、暫く女もオメガもいないところで過ごしたい。ゆえに、最も心を許している側近のみ連れて、しばらく王都をお離れになった』――という噂が広まってる頃だから」
「っ!? ~~こ、このっ、腹黒――っ!!」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてない!!」
いっそう近付いてくるルベルトの胸を押し返そうとするが、抵抗も空しく、ユリスは彼に手を取られて、優しく指にキスをされた。
「誰が何と言おうと、お前は私の大事な番だよ」
「っ――」
嬉しい。嬉しくて堪らないその言葉が、自身をそれほど傷付ける言葉になるなんて、ユリスははじめて思い知ったのだった。
2026/02/01 14:31:28
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 9
ルベルトと番になってから、一週間余り。
ユリスの身の回りは、奇妙なほど落ち着いていた。
「――ほら。この間、殿下が薬を……」
「おいたわしいこと……」
もちろん、王太子が発情誘発剤をかけられたことは大問題になっており、ユリスにも彼を憐れむ人々の声が届いている。
だが、そんな噂話に興じる彼らも……、
「あら、ローエンベルク卿」
声をかけられたユリスは、足を止めて振り返った。たしか彼女は、ルベルトの婚約者候補の母だったはず、と思い返しながら笑みを浮かべる。
「お久し振りでございます、夫人」
いかがなさいましたか、と視線で問うと、彼女は頬に手を当てて、小首を傾げた。
「いえね。殿下のご状況が分からない、と娘が酷く心配しているものだから。殿下はご息災でいらっしゃるのかしら?」
「ええ。お身体の方はご健康そのものです。ただ、今回の事件は婚約者候補様との面通りの前に起きましたので……。次はご令嬢方に危害が加えられるのでは、とご心配なさっておいでなのです」
だから、面会が叶わないのだと伝えると、彼女は痛く感激した様子で、うんうんと何度も頷いた。
「まぁ、そうでしたのね……。そういうことなら。ローエンベルク卿も、くれぐれも殿下をよくお支え下さいましね」
それでは、と去っていく女を、ユリスは一礼して見送った後、再び歩き出す。
――このように、ユリスがオメガであることも、ルベルトの番になってしまったことも、周囲には知られぬまま、日々が過ぎている。
ルベルトも……言っては何だが不気味に沈黙したままで、本当に何事もなかったかのようだった。
(とはいえ。そろそろ、だろうな……)
ルベルトとも短くない付き合いだ。彼がそろそろ何かしらの行動を仕掛けてくる頃合いだと、ユリスは推測していた。
その上、「そろそろ」と言うならば、もう一つ。
(後……、一ヶ月もしない内に、発情期が来る。どうやったら殿下を躱せるだろう……)
ぐるぐると思考を巡らせている内に、ユリスはルベルトの執務室へと辿り着いた。
「失礼いたしま――」
「ユリス、来たか!」
挨拶も言い終わらない内に、ルベルトの声が響いて、ユリスは目を丸くする。
部屋に入ると、彼は満面の笑みを浮かべながら、つかつかとこちらに歩いてきて、こう言った。
「旅行に行こう、ユリス!」
「……はあ?」
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 9
ルベルトと番になってから、一週間余り。
ユリスの身の回りは、奇妙なほど落ち着いていた。
「――ほら。この間、殿下が薬を……」
「おいたわしいこと……」
もちろん、王太子が発情誘発剤をかけられたことは大問題になっており、ユリスにも彼を憐れむ人々の声が届いている。
だが、そんな噂話に興じる彼らも……、
「あら、ローエンベルク卿」
声をかけられたユリスは、足を止めて振り返った。たしか彼女は、ルベルトの婚約者候補の母だったはず、と思い返しながら笑みを浮かべる。
「お久し振りでございます、夫人」
いかがなさいましたか、と視線で問うと、彼女は頬に手を当てて、小首を傾げた。
「いえね。殿下のご状況が分からない、と娘が酷く心配しているものだから。殿下はご息災でいらっしゃるのかしら?」
「ええ。お身体の方はご健康そのものです。ただ、今回の事件は婚約者候補様との面通りの前に起きましたので……。次はご令嬢方に危害が加えられるのでは、とご心配なさっておいでなのです」
だから、面会が叶わないのだと伝えると、彼女は痛く感激した様子で、うんうんと何度も頷いた。
「まぁ、そうでしたのね……。そういうことなら。ローエンベルク卿も、くれぐれも殿下をよくお支え下さいましね」
それでは、と去っていく女を、ユリスは一礼して見送った後、再び歩き出す。
――このように、ユリスがオメガであることも、ルベルトの番になってしまったことも、周囲には知られぬまま、日々が過ぎている。
ルベルトも……言っては何だが不気味に沈黙したままで、本当に何事もなかったかのようだった。
(とはいえ。そろそろ、だろうな……)
ルベルトとも短くない付き合いだ。彼がそろそろ何かしらの行動を仕掛けてくる頃合いだと、ユリスは推測していた。
その上、「そろそろ」と言うならば、もう一つ。
(後……、一ヶ月もしない内に、発情期が来る。どうやったら殿下を躱せるだろう……)
ぐるぐると思考を巡らせている内に、ユリスはルベルトの執務室へと辿り着いた。
「失礼いたしま――」
「ユリス、来たか!」
挨拶も言い終わらない内に、ルベルトの声が響いて、ユリスは目を丸くする。
部屋に入ると、彼は満面の笑みを浮かべながら、つかつかとこちらに歩いてきて、こう言った。
「旅行に行こう、ユリス!」
「……はあ?」
2026/02/01 14:30:03
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 8
幸い、アルファの発情に誘発されただけのそれは、一晩経つとすっかりなくなっていた。
だが――、いや、だからこそというべきか、発情の熱でうやむやになっていた、身体の痛みを自覚してしまう。初めて男を受け入れた後ろの違和感。それから、項のひりつくような痛みだ。
「……おはようございます」
ルベルトと顔を合わせたくない。
彼と出逢ってから、はじめてそんなことを思ったが、発情が収まった以上、出仕しないわけにもいかない。先延ばしにすればするだけ、一層行きたくないと思ってしまうのは目にみえていたからだ。
「ユリス!」
ルベルトの執務室に入ると、彼が立ち上がって早足で駆け寄ってきた。
「よかった。その……、身体はなんともないか?」
「……はい」
彼の視線を避けるように俯いて、自分の机へ向かおうとする。だが、ルベルトはそれを阻むように前へ立ち塞がってくる。
「ユリス、こっちを向いてくれ。私は……」
「っ!」
頬に手を伸ばされて、ユリスは思わずそれを払いのけた。
パシッと音が二人きりの部屋に、妙に大きく響いた気がする。
ユリスは驚いて目を見開くルベルトを見ていられずに、また視線を逸らした。
「昨日、言いましたよね。私は『アルファの男』。貴方の番になる気はない、と」
「ユリス……、だが」
「昨日のことは事故です。……お互い、正気じゃなかった。違いますか」
「――しかし、私は、お前に……っ」
「責任を感じているなら、……もう、放っておいてください」
「っ……」
ユリスは今度こそルベルトの隣をすり抜けて、席についた。ルベルトも仕方なさげではあったが、椅子に戻っていく。
(……でも、いつまでこれで躱せるだろうか)
番間の妊娠率は非常に高い。中に何度も……、溢れるほどに出されたのも覚えている。通常なら、既に妊娠していても不思議はないくらいなのだ。
ルベルトも、それは当然知っているはずだし、子がいると考えている可能性も高い。
妊娠がはっきりするであろう数ヶ月以内には、再度何かしら話があるはずだ。それは避けられない。
(ああ、でもその前にあれがある)
ユリスは軽く頭痛を覚えて、眉間を揉んだ。
それを心配げに見つめるルベルトの視線には気付かない振りをしながら、仕事に意識を向ける。
彼と、ただのアルファとオメガとして出逢えていたなら――。
そんなありもしない、想像をしながら。
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 8
幸い、アルファの発情に誘発されただけのそれは、一晩経つとすっかりなくなっていた。
だが――、いや、だからこそというべきか、発情の熱でうやむやになっていた、身体の痛みを自覚してしまう。初めて男を受け入れた後ろの違和感。それから、項のひりつくような痛みだ。
「……おはようございます」
ルベルトと顔を合わせたくない。
彼と出逢ってから、はじめてそんなことを思ったが、発情が収まった以上、出仕しないわけにもいかない。先延ばしにすればするだけ、一層行きたくないと思ってしまうのは目にみえていたからだ。
「ユリス!」
ルベルトの執務室に入ると、彼が立ち上がって早足で駆け寄ってきた。
「よかった。その……、身体はなんともないか?」
「……はい」
彼の視線を避けるように俯いて、自分の机へ向かおうとする。だが、ルベルトはそれを阻むように前へ立ち塞がってくる。
「ユリス、こっちを向いてくれ。私は……」
「っ!」
頬に手を伸ばされて、ユリスは思わずそれを払いのけた。
パシッと音が二人きりの部屋に、妙に大きく響いた気がする。
ユリスは驚いて目を見開くルベルトを見ていられずに、また視線を逸らした。
「昨日、言いましたよね。私は『アルファの男』。貴方の番になる気はない、と」
「ユリス……、だが」
「昨日のことは事故です。……お互い、正気じゃなかった。違いますか」
「――しかし、私は、お前に……っ」
「責任を感じているなら、……もう、放っておいてください」
「っ……」
ユリスは今度こそルベルトの隣をすり抜けて、席についた。ルベルトも仕方なさげではあったが、椅子に戻っていく。
(……でも、いつまでこれで躱せるだろうか)
番間の妊娠率は非常に高い。中に何度も……、溢れるほどに出されたのも覚えている。通常なら、既に妊娠していても不思議はないくらいなのだ。
ルベルトも、それは当然知っているはずだし、子がいると考えている可能性も高い。
妊娠がはっきりするであろう数ヶ月以内には、再度何かしら話があるはずだ。それは避けられない。
(ああ、でもその前にあれがある)
ユリスは軽く頭痛を覚えて、眉間を揉んだ。
それを心配げに見つめるルベルトの視線には気付かない振りをしながら、仕事に意識を向ける。
彼と、ただのアルファとオメガとして出逢えていたなら――。
そんなありもしない、想像をしながら。
2026/02/01 14:29:11
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 7
――お父様とはお会いになられない方が良いでしょうね。
ユリスは屋敷の離れに移動した後、ベッドに寝転がって目を閉じながら、先程の妹と交わした会話を思い返していた。
何故父に会わない方が良いのか。それは、分かる。
彼女と同じようにアルファの父も、ユリスの変化に気付くはずだからだ。そして、その「相手」を特定するのも容易だろう。
母について言及されなかったのは、彼女がユリスを視界にも入れたくないとばかりに避けていることを、アンジェリアも承知しているからだ。
だが、そんなこと可能なのだろうか。
殆ど顔を合わせることのない父とはいえ、仕事上で接する機会はある。
(……相談できる相手がいない。それこそ、ルベルト様くらいしか――)
だが、ユリスはぷるぷると首を横に振った。
「駄目だ。殿下にだけは頼れない」
もし相談などすれば、自分がオメガとして欠陥品であることも知られてしまう。
それは、嫌だ……。
また、眦に涙が浮かんで、それが零れてしまう前に腕で目を覆った。
オメガの自分をずっと否定してきたのに、本当の意味で彼と番になれたらと思っている自分に気付く。
「なんて、浅ましいんだ」
ユリスはきつく唇を噛んで、どうにか涙を堪えると、疼きはじめた下肢に気付かない振りをして、布団を頭からかぶって目を閉じた。
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 7
――お父様とはお会いになられない方が良いでしょうね。
ユリスは屋敷の離れに移動した後、ベッドに寝転がって目を閉じながら、先程の妹と交わした会話を思い返していた。
何故父に会わない方が良いのか。それは、分かる。
彼女と同じようにアルファの父も、ユリスの変化に気付くはずだからだ。そして、その「相手」を特定するのも容易だろう。
母について言及されなかったのは、彼女がユリスを視界にも入れたくないとばかりに避けていることを、アンジェリアも承知しているからだ。
だが、そんなこと可能なのだろうか。
殆ど顔を合わせることのない父とはいえ、仕事上で接する機会はある。
(……相談できる相手がいない。それこそ、ルベルト様くらいしか――)
だが、ユリスはぷるぷると首を横に振った。
「駄目だ。殿下にだけは頼れない」
もし相談などすれば、自分がオメガとして欠陥品であることも知られてしまう。
それは、嫌だ……。
また、眦に涙が浮かんで、それが零れてしまう前に腕で目を覆った。
オメガの自分をずっと否定してきたのに、本当の意味で彼と番になれたらと思っている自分に気付く。
「なんて、浅ましいんだ」
ユリスはきつく唇を噛んで、どうにか涙を堪えると、疼きはじめた下肢に気付かない振りをして、布団を頭からかぶって目を閉じた。
2026/02/01 14:27:41
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 6
ユリスは暗い気分のまま、馬車を降りた。
これから何日続くか分からない発情を一人で乗り越えなければいけない。薬で収まっている今のうちに、できる準備をしておかねば。
だが、こういう時に限って間の悪いもので、玄関扉を開けたユリスは、そのまま固まってしまった。
「……アンジェリア」
名前を呼ばれた彼女――六つ年下の妹アンジェリアは、微かに眉をひそめた。
「随分とお早いお帰りですのね、お兄様」
「うん……。その、体調が…悪くなって。帰らせてもらった」
「そうですの」
ユリスは深く追及される前に、彼女の横を通り過ぎようとした。しかし――
「お待ちなさいませ」
振り返ると、彼女はしかめっ面をしながら、ユリスに近付いてくる。
「な、なに……」
「じっとなさい」
アンジェリアは、すんとユリスの首元で鼻をならす。そして、ますます眉間に皺を寄せた。
「お兄様……、どこの馬の骨と番って参りましたの」
「!」
ハッとして一歩後ずさるが、何も答えられなかった。
そうだ。彼女はアルファ。血縁者は血が近ければ近いほど発情の誘発を受けることはないが、当然、ユリスの発するフェロモンの違いには気付く。
「お兄様」
「それは、その……」
はくはくと口を開閉させるが、何も言葉が出てこない。
アンジェリアは目を眇めて、ユリスの様子を探るように見つめると、小さく溜息をついた。
「まあ、いいです。答えたくなければ。興味もありませんし。ですが――」
彼女は一呼吸おいて、じっとユリスを見上げながら言った。
「お父様とはお会いになられない方が良いでしょうね。何故かは、分かりますわね」
「……うん」
「なら結構」
それだけ言うと、アンジェリアは身を翻して去って行った。
ユリスはその背中をただ見送るしかできなかった。
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 6
ユリスは暗い気分のまま、馬車を降りた。
これから何日続くか分からない発情を一人で乗り越えなければいけない。薬で収まっている今のうちに、できる準備をしておかねば。
だが、こういう時に限って間の悪いもので、玄関扉を開けたユリスは、そのまま固まってしまった。
「……アンジェリア」
名前を呼ばれた彼女――六つ年下の妹アンジェリアは、微かに眉をひそめた。
「随分とお早いお帰りですのね、お兄様」
「うん……。その、体調が…悪くなって。帰らせてもらった」
「そうですの」
ユリスは深く追及される前に、彼女の横を通り過ぎようとした。しかし――
「お待ちなさいませ」
振り返ると、彼女はしかめっ面をしながら、ユリスに近付いてくる。
「な、なに……」
「じっとなさい」
アンジェリアは、すんとユリスの首元で鼻をならす。そして、ますます眉間に皺を寄せた。
「お兄様……、どこの馬の骨と番って参りましたの」
「!」
ハッとして一歩後ずさるが、何も答えられなかった。
そうだ。彼女はアルファ。血縁者は血が近ければ近いほど発情の誘発を受けることはないが、当然、ユリスの発するフェロモンの違いには気付く。
「お兄様」
「それは、その……」
はくはくと口を開閉させるが、何も言葉が出てこない。
アンジェリアは目を眇めて、ユリスの様子を探るように見つめると、小さく溜息をついた。
「まあ、いいです。答えたくなければ。興味もありませんし。ですが――」
彼女は一呼吸おいて、じっとユリスを見上げながら言った。
「お父様とはお会いになられない方が良いでしょうね。何故かは、分かりますわね」
「……うん」
「なら結構」
それだけ言うと、アンジェリアは身を翻して去って行った。
ユリスはその背中をただ見送るしかできなかった。
2026/02/01 14:26:45
2026/02/01 14:25:39
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 17
行為の疲れが出たのか、眠ってしまったアレイストの頭を、ロウェルはやわらかく撫でる。
あどけなく眠る姿を見て、「愛しいな」という言葉が自然と湧いてくる。
一体いつからそんな風に思うようになったのだろう、と考えて、ロウェルは肩を竦めた。
彼と初めて会った時、ゆりかごの中で眠る姿を見た時には、既にこの感情を抱いていた気がする。
だからこそ、そんな彼を傷付ける結果を生んでしまったのが自分だということが、あまりに受け入れ難く、苦しかったのだ。
自分の全てを擲ってでも、彼に尽くしたいと、そうしなければならないと思うほどに。
ロウェルはアレイストの髪に指を通す。
その時、ふっとアレイストの目が開いた。
「あ、悪い。起こしたか?」
「ん……、いや……」
どけようとした手を、寝惚け眼のアレイストが掴んで、頬を寄せる。
「ど、どうした……?」
すりすりといつまでも離そうとしないアレイストに、照れと戸惑いとを感じながら訊ねると、彼はんー……、と小さく呻いてから、ぽつりと呟いた。
「僕さ、ロウェルの手、すきだな……。たぶん、前からずっと」
ふんわりと微笑みながら、アレイストはロウェルの指にキスをする。
「あとさ、寝てる時……たまに頭にキスしてただろ。あれも……」
半分眠りながら呟かれた言葉に、ロウェルは顔をぼっと赤らめる。
「え、あ、ま、まさかあの時も、起きてたのか!? ――って、もう寝てる!?」
再びすぴすぴと眠りはじめたアレイストに腕を取られたまま、ロウェルは一人羞恥で呻く。詳しい話を聞きたい、が、叩き起こすわけにもいかず、途方に暮れた。
「あぁ……、もう……。起きたら覚えてろよ……」
大きな溜息をついたロウェルは、穏やかに眠るアレイストに苦笑して、自身もその隣へ身を横たえる。
それから、もう遠慮することなく、その身体を抱き寄せた。
「次の転居先はどこがいいかな……。あたたかい所の方がいいよな。アレイストにも希望を聞いて――……」
腕の中にすっぽり収まるアレイストに、ロウェルは胸の奥にずっと凝っていた罪悪感という冷たい氷が解けていくのを感じた。
氷が融ければ春が来る。
二人ならば、これから訪れる困難もきっと乗り越えていけるだろう。
ロウェルは、やっと手に入れた大事な大事な宝物を、ぎゅうっと抱きしめて、穏やかな眠りに身を委ねた。
完
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 17
行為の疲れが出たのか、眠ってしまったアレイストの頭を、ロウェルはやわらかく撫でる。
あどけなく眠る姿を見て、「愛しいな」という言葉が自然と湧いてくる。
一体いつからそんな風に思うようになったのだろう、と考えて、ロウェルは肩を竦めた。
彼と初めて会った時、ゆりかごの中で眠る姿を見た時には、既にこの感情を抱いていた気がする。
だからこそ、そんな彼を傷付ける結果を生んでしまったのが自分だということが、あまりに受け入れ難く、苦しかったのだ。
自分の全てを擲ってでも、彼に尽くしたいと、そうしなければならないと思うほどに。
ロウェルはアレイストの髪に指を通す。
その時、ふっとアレイストの目が開いた。
「あ、悪い。起こしたか?」
「ん……、いや……」
どけようとした手を、寝惚け眼のアレイストが掴んで、頬を寄せる。
「ど、どうした……?」
すりすりといつまでも離そうとしないアレイストに、照れと戸惑いとを感じながら訊ねると、彼はんー……、と小さく呻いてから、ぽつりと呟いた。
「僕さ、ロウェルの手、すきだな……。たぶん、前からずっと」
ふんわりと微笑みながら、アレイストはロウェルの指にキスをする。
「あとさ、寝てる時……たまに頭にキスしてただろ。あれも……」
半分眠りながら呟かれた言葉に、ロウェルは顔をぼっと赤らめる。
「え、あ、ま、まさかあの時も、起きてたのか!? ――って、もう寝てる!?」
再びすぴすぴと眠りはじめたアレイストに腕を取られたまま、ロウェルは一人羞恥で呻く。詳しい話を聞きたい、が、叩き起こすわけにもいかず、途方に暮れた。
「あぁ……、もう……。起きたら覚えてろよ……」
大きな溜息をついたロウェルは、穏やかに眠るアレイストに苦笑して、自身もその隣へ身を横たえる。
それから、もう遠慮することなく、その身体を抱き寄せた。
「次の転居先はどこがいいかな……。あたたかい所の方がいいよな。アレイストにも希望を聞いて――……」
腕の中にすっぽり収まるアレイストに、ロウェルは胸の奥にずっと凝っていた罪悪感という冷たい氷が解けていくのを感じた。
氷が融ければ春が来る。
二人ならば、これから訪れる困難もきっと乗り越えていけるだろう。
ロウェルは、やっと手に入れた大事な大事な宝物を、ぎゅうっと抱きしめて、穏やかな眠りに身を委ねた。
完
2026/02/01 14:23:16
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 16
「――っ!! や、あぁ……! もう、むり――っ」
後ろと前とを同時に指で刺激されて、身体が跳ねる。
「だいじょうぶだから。ほらゆっくり息して」
ロウェルの言葉に、アレイストは無言でぶんぶんと首を横に振った。
達きそうで達かせてもらえないまま、どのくらい時間が経っただろう。高い位置にあった陽が落ちて、部屋の中はいつの間にか薄暗くなっている。ベッドの上で裸に剥かれて喘ぐばかりのアレイストは、絶妙に動くロウェルの手に翻弄され続けている。
先走りと潤滑油でめちゃくちゃになっている下肢は、もうどこを触られても感じてしまう。
八年前、自分がロウェルを抱いていた時、どれほど雑なことをしていたのかということを、あらためて思い知らされるような気分だった。
そんなことを考えていることを目敏く見つけたロウェルは、目を眇めて、耳元で囁く。
「余計なこと考えてる?」
「あ、だって……、っ――!」
体内にあるしこりをぐりっと押し潰されて、声にならない叫びを上げる。目の前が真っ白になってチカチカした。だが、勃ち上がった陰茎の根本を押さえられていて、射精させてもらえない。頭がとろとろふわふわしたまま、もうずっと戻れないでいる。
きもちいい。気持ちよすぎて、苦しいほど。
まさしく、「何も考えられない」。
「ぁ、は……、あぁん……っ」
媚びた声が口から漏れる。それを恥ずかしいと思う暇もないほど、快感が押し寄せていた。
けれど、と生理的な涙で滲んだ視界で、下方を見る。
ロウェルはアレイストに快楽を与えるばかりで、シャツのボタンすら外していない。精々、袖を捲った程度だ。
ズボンは痛そうなほど張り詰めているのに。
「っ、なぁ……、挿れないのか……?」
右足を動かしてそれを足の甲で擦ると、びくりと彼の身体が震えた。
「アレイスト……」
ロウェルと視線が絡んだ。彼は何かに逡巡するように視線を彷徨わせた後、再びこちらを見て、呟く。
「良いのか?」
なんとなく「後悔しないか」と聞かれているような気がした。
ロウェルに抱かれれば、二人の仲は何か決定的なものになってしまう予感がある。
これまでの交わりには伴わなかった、心に触れ合うようなそれが、関係を変えてしまうような。
ここで頷けば、彼と二度と離れられなくなるのだろうな、と不意に思う。
だが、アレイストはふっと笑った。
そして、動いてくれない左足を、どうにか太腿を動かしてロウェルの前に持ってくる。
「今更だろ」
「…………そうだな」
もう二十年以上も前になるあの日から、きっと離れては生きられなかったのだろうから。
ロウェルは恭しくその左足に触れて、甲にキスをした。
感触は何も感じない。けれど、その仕草で彼の優しく労るような思いは伝わってくる。
ロウェルはそのまま左足のふくら脛にもキスをして、どんどん上へ上がってくる。
その唇が腿へと到達した時、ぴくんと足が震えた。その反応にロウェルは目を細めて、内腿を強く吸って跡を残す。その上を更に舌が擽った。
「ちょ、ロウェル……」
先程までよりゆるい刺激に、どこかじれったさを感じて彼の名を呼んだ。アレイストの焦燥を察したのか、ロウェルはくすりと笑って、頷いた。
そして、身体を少し起こすとズボンの留め金を外し、サッと服を全部脱ぎ去ってしまう。
そこに現れた太い屹立にアレイストは息を飲んだ。
少々怖気付いていると、ロウェルが苦笑しながらアレイストの腕を引く。
「あっ……」
胡座をかいたロウェルの膝の上に、向かい合うように乗せられて腰を掴まれる。
どうしたらいいのか戸惑っていると、ロウェルにぎゅっと抱きしめられて、背中を撫でられた。
「大丈夫」
その言葉でやっと身体の力が抜けて、アレイストは彼の首にしがみつくように腕を回した。
「っ!」
後孔にぴとりと熱が添えられる。そして、ゆっくりと腰が下ろされていって、くちゅりという水音共に後ろが押し開かれていく。
「あ、あぁ……っ」
事前に散々弄られたせいか、痛みはない。だが、指とは全く違う圧迫感に息が詰まった。
宥めるように背中をロウェルの手が撫でる。その刺激に右膝の力が抜けて、左側の腰を掴むロウェルの手に体重がかかる。その反動でじゅぷりという卑猥な音が耳を犯した。
「んっ、……っは、あ……」
そうしている間にもゆっくりと挿入は進んで、屹立の一番太いところが、中へと挿入った。
ビクンと背中が跳ねて、ロウェルにしがみつく腕にも力が籠もった。
その後は殆ど抵抗もなく、ずるずると腰を下ろしていく。
「あ、っ、……あぁ……ん、ふ……」
そして、最後の少しの所でロウェルの手が離れて、奥をくんっと突かれた。
「んあっ!」
ぴゅっと自身の陰茎から白濁が飛び、軽く達したのだと知る。
その白いものがロウェルの肌にも散っている。
その光景が、二人が本当に近い位置にいることを象徴しているように見えて、胸がいっぱいになった。
「……ロウェル」
「うん?」
「僕も……幸せになれるかな」
ふと、穏やかに微笑む姉の姿が浮かんだ。
いつか自分もあんな表情を浮かべられるようになれるだろうか。
ロウェルは少し悩むように沈黙した後、アレイストの髪を撫でた。
「分からない。……けどさ、二人でそうなれる努力をしてみたいと思う。アレイストはどうだ?」
ロウェルの言葉に、ふとアレイストも笑みを零した。
無闇に「幸せにする」などと言われるより、余程安心できる気がした。
「そうだな。ロウェルとなら、できる気がする」
アレイスト少し顔を上げて、ロウェルを見た。
そして、どちらからともなく口付けを交わす。
やっと心ごと抱き合えている。
そんな実感を覚えながら、アレイストはキスに溺れていった。
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 16
「――っ!! や、あぁ……! もう、むり――っ」
後ろと前とを同時に指で刺激されて、身体が跳ねる。
「だいじょうぶだから。ほらゆっくり息して」
ロウェルの言葉に、アレイストは無言でぶんぶんと首を横に振った。
達きそうで達かせてもらえないまま、どのくらい時間が経っただろう。高い位置にあった陽が落ちて、部屋の中はいつの間にか薄暗くなっている。ベッドの上で裸に剥かれて喘ぐばかりのアレイストは、絶妙に動くロウェルの手に翻弄され続けている。
先走りと潤滑油でめちゃくちゃになっている下肢は、もうどこを触られても感じてしまう。
八年前、自分がロウェルを抱いていた時、どれほど雑なことをしていたのかということを、あらためて思い知らされるような気分だった。
そんなことを考えていることを目敏く見つけたロウェルは、目を眇めて、耳元で囁く。
「余計なこと考えてる?」
「あ、だって……、っ――!」
体内にあるしこりをぐりっと押し潰されて、声にならない叫びを上げる。目の前が真っ白になってチカチカした。だが、勃ち上がった陰茎の根本を押さえられていて、射精させてもらえない。頭がとろとろふわふわしたまま、もうずっと戻れないでいる。
きもちいい。気持ちよすぎて、苦しいほど。
まさしく、「何も考えられない」。
「ぁ、は……、あぁん……っ」
媚びた声が口から漏れる。それを恥ずかしいと思う暇もないほど、快感が押し寄せていた。
けれど、と生理的な涙で滲んだ視界で、下方を見る。
ロウェルはアレイストに快楽を与えるばかりで、シャツのボタンすら外していない。精々、袖を捲った程度だ。
ズボンは痛そうなほど張り詰めているのに。
「っ、なぁ……、挿れないのか……?」
右足を動かしてそれを足の甲で擦ると、びくりと彼の身体が震えた。
「アレイスト……」
ロウェルと視線が絡んだ。彼は何かに逡巡するように視線を彷徨わせた後、再びこちらを見て、呟く。
「良いのか?」
なんとなく「後悔しないか」と聞かれているような気がした。
ロウェルに抱かれれば、二人の仲は何か決定的なものになってしまう予感がある。
これまでの交わりには伴わなかった、心に触れ合うようなそれが、関係を変えてしまうような。
ここで頷けば、彼と二度と離れられなくなるのだろうな、と不意に思う。
だが、アレイストはふっと笑った。
そして、動いてくれない左足を、どうにか太腿を動かしてロウェルの前に持ってくる。
「今更だろ」
「…………そうだな」
もう二十年以上も前になるあの日から、きっと離れては生きられなかったのだろうから。
ロウェルは恭しくその左足に触れて、甲にキスをした。
感触は何も感じない。けれど、その仕草で彼の優しく労るような思いは伝わってくる。
ロウェルはそのまま左足のふくら脛にもキスをして、どんどん上へ上がってくる。
その唇が腿へと到達した時、ぴくんと足が震えた。その反応にロウェルは目を細めて、内腿を強く吸って跡を残す。その上を更に舌が擽った。
「ちょ、ロウェル……」
先程までよりゆるい刺激に、どこかじれったさを感じて彼の名を呼んだ。アレイストの焦燥を察したのか、ロウェルはくすりと笑って、頷いた。
そして、身体を少し起こすとズボンの留め金を外し、サッと服を全部脱ぎ去ってしまう。
そこに現れた太い屹立にアレイストは息を飲んだ。
少々怖気付いていると、ロウェルが苦笑しながらアレイストの腕を引く。
「あっ……」
胡座をかいたロウェルの膝の上に、向かい合うように乗せられて腰を掴まれる。
どうしたらいいのか戸惑っていると、ロウェルにぎゅっと抱きしめられて、背中を撫でられた。
「大丈夫」
その言葉でやっと身体の力が抜けて、アレイストは彼の首にしがみつくように腕を回した。
「っ!」
後孔にぴとりと熱が添えられる。そして、ゆっくりと腰が下ろされていって、くちゅりという水音共に後ろが押し開かれていく。
「あ、あぁ……っ」
事前に散々弄られたせいか、痛みはない。だが、指とは全く違う圧迫感に息が詰まった。
宥めるように背中をロウェルの手が撫でる。その刺激に右膝の力が抜けて、左側の腰を掴むロウェルの手に体重がかかる。その反動でじゅぷりという卑猥な音が耳を犯した。
「んっ、……っは、あ……」
そうしている間にもゆっくりと挿入は進んで、屹立の一番太いところが、中へと挿入った。
ビクンと背中が跳ねて、ロウェルにしがみつく腕にも力が籠もった。
その後は殆ど抵抗もなく、ずるずると腰を下ろしていく。
「あ、っ、……あぁ……ん、ふ……」
そして、最後の少しの所でロウェルの手が離れて、奥をくんっと突かれた。
「んあっ!」
ぴゅっと自身の陰茎から白濁が飛び、軽く達したのだと知る。
その白いものがロウェルの肌にも散っている。
その光景が、二人が本当に近い位置にいることを象徴しているように見えて、胸がいっぱいになった。
「……ロウェル」
「うん?」
「僕も……幸せになれるかな」
ふと、穏やかに微笑む姉の姿が浮かんだ。
いつか自分もあんな表情を浮かべられるようになれるだろうか。
ロウェルは少し悩むように沈黙した後、アレイストの髪を撫でた。
「分からない。……けどさ、二人でそうなれる努力をしてみたいと思う。アレイストはどうだ?」
ロウェルの言葉に、ふとアレイストも笑みを零した。
無闇に「幸せにする」などと言われるより、余程安心できる気がした。
「そうだな。ロウェルとなら、できる気がする」
アレイスト少し顔を上げて、ロウェルを見た。
そして、どちらからともなく口付けを交わす。
やっと心ごと抱き合えている。
そんな実感を覚えながら、アレイストはキスに溺れていった。
2026/02/01 14:21:53
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 15
家に戻るまで、アレイストたちは互いに無言だった。
歩調の遅い自分に合わせた歩みは、じれったくなるほど長く感じて、言い知れぬ焦燥が募る。
セレンティーネの見せた、穏やかな微笑みが、心に引っかかっていたのも原因かもしれない。
王族の軛、周囲の期待、諸々のものに囚われ藻掻いていたのに、彼女一人だけ抜け出して手の届かない所へいってしまったような気がして。
自分はまだ囚われたまま。
考えないように、見ないように、そう振る舞っていただけだ。
長い時間をかけて家まで辿り着き、玄関扉を締める。
すると、それまでまるで我慢していたかのように、涙が次々に零れ落ちる。
「ロウェル……」
涙を流れ落ちるままに、アレイストは振り返った彼を見上げた。
「……たすけて」
腕を伸ばせば抱き上げられる。
彼の首にぎゅっと抱きついて懇願する。
「もう……、なにもかんがえたくない」
ロウェルはアレイストが願えばなんでも叶えてくれる。
彼の罪悪感に付け込んで、依存することでしか生きられなくなった自分は、姉の目にはどんな風に映っていたのだろう。
そんなことを思いながら。
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 15
家に戻るまで、アレイストたちは互いに無言だった。
歩調の遅い自分に合わせた歩みは、じれったくなるほど長く感じて、言い知れぬ焦燥が募る。
セレンティーネの見せた、穏やかな微笑みが、心に引っかかっていたのも原因かもしれない。
王族の軛、周囲の期待、諸々のものに囚われ藻掻いていたのに、彼女一人だけ抜け出して手の届かない所へいってしまったような気がして。
自分はまだ囚われたまま。
考えないように、見ないように、そう振る舞っていただけだ。
長い時間をかけて家まで辿り着き、玄関扉を締める。
すると、それまでまるで我慢していたかのように、涙が次々に零れ落ちる。
「ロウェル……」
涙を流れ落ちるままに、アレイストは振り返った彼を見上げた。
「……たすけて」
腕を伸ばせば抱き上げられる。
彼の首にぎゅっと抱きついて懇願する。
「もう……、なにもかんがえたくない」
ロウェルはアレイストが願えばなんでも叶えてくれる。
彼の罪悪感に付け込んで、依存することでしか生きられなくなった自分は、姉の目にはどんな風に映っていたのだろう。
そんなことを思いながら。
2026/02/01 14:20:50
作品一覧
改稿版更新中
初稿更新終了
初稿更新中
改稿版完結


#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 11
そんなこんなで馬車旅が続き、二人は滞在先の離宮に辿り着いた。
ユリスにとっては初めて訪れる場所だが、ルベルトには幼少期に何度か訪れたことのある馴染みの場所らしい。
その離宮は、使用人の数も最低限で、更に離れのような宮まである。そちらは常駐の使用人すらいないらしく、二人の関係を徹底的に隠すつもりであることには、安堵した。
荷物を運び入れ、作業をしていた使用人たちも出て行くと、本当に二人きりになってしまった。
本館と繋がるのは一本の廊下のみで、そこの出入り口まで食事が運ばれるそうだが、それ以上に人が入ってくることは基本的にないという。
かつて、身分の低い愛妾を持った王が、彼女と二人で過ごすために作られた決まりらしい。
少々出来過ぎでは、と思うほどユリスにとって都合がよかった。
夕食を終え、部屋でちびちびと茶を飲んでいると、後ろに気配を感じた。しかし、振り返るより早く、ぎゅっと肩に腕が回される。
「でんっ……」
「ルベルト」
名前で呼べ、と暗に言われ、ユリスは仕方なく言い直す。
「……ルベルト様」
「ん」
嬉しそうに頷いた彼は、ユリスの顎に手を添えて、後ろを向かせると、唇を寄せてくる。
「あっ……」
「拒まないでくれ」
懇願するような声に、きゅうっと胎が疼いた気がした。
そして、そのまま抗い切れずにキスをする。
ちゅっ、ちゅと啄むように口付けられ、肌を舌がなぞった。
「ぁ……」
吐息の合間に、舌が侵入する。
だめだ、と頭の片隅では思ったが、それ以上の抵抗ができない。
甘くて、脳が痺れる。身体の奥が、この男を求めていた。
じわりと後ろが濡れて、身体の力が抜ける。
心臓がどくりと大きな音を立てて、肌がざわめいた。
これは――
「っ、ルベルト、様……、おれ……」
「ん?」
ユリスは、彼の服をぎゅっと掴んで、ぽつりと言った。
「発情期、きちゃった……」
抑制剤を飲まなければ。
ああ、でも……、「俺のアルファ」が目の前にいるのに。
うるんだ目で見上げると、ルベルトが微かに唸った。
「ユリス」
自分の名前が、信じられないほど甘く聞こえた。
いつもはもっと緩やかに熱が高まってゆくのに。これは、抑制剤を飲んでいないせいなのか、それとも番が目の前にいるからなのか。
「抱いて、いいか」
「…………っ」
ユリスは小さく頷いた。
その誘うような声に、欲を漲らせる目に、抗う術など持っているはずもなかったのだ。
「おいで」
ルベルトの声に誘われるまま、ふらつく足で立ち上がれば、すぐにルベルトに抱え上げられた。
そう身長も変わらないはずなのに、軽々と抱き上げられて羞恥に顔が赤らむ。
「あっ、ま……まって、くださ――」
「もう待たない」
首筋にキスをされて、息を飲む。
触れた場所が熱い。服越しに感じる体温ももどかしい。
早く素肌でこの男を感じたい。
でも、もう一度肌を重ねてしまえば、自分は――。
葛藤する内心と裏腹に、ユリスはぎゅっとルベルトの首に腕を回す。
ぴったりと抱きつけば、ルベルトが嬉しそうに笑みを漏らした。
「ルベルトさま……」
「まずは、風呂に入ろうか」
欲の孕んだ囁きに、ユリスは何も答えることができなかった。