初稿置き場
2026/02/01 14:29:11
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 7
――お父様とはお会いになられない方が良いでしょうね。
ユリスは屋敷の離れに移動した後、ベッドに寝転がって目を閉じながら、先程の妹と交わした会話を思い返していた。
何故父に会わない方が良いのか。それは、分かる。
彼女と同じようにアルファの父も、ユリスの変化に気付くはずだからだ。そして、その「相手」を特定するのも容易だろう。
母について言及されなかったのは、彼女がユリスを視界にも入れたくないとばかりに避けていることを、アンジェリアも承知しているからだ。
だが、そんなこと可能なのだろうか。
殆ど顔を合わせることのない父とはいえ、仕事上で接する機会はある。
(……相談できる相手がいない。それこそ、ルベルト様くらいしか――)
だが、ユリスはぷるぷると首を横に振った。
「駄目だ。殿下にだけは頼れない」
もし相談などすれば、自分がオメガとして欠陥品であることも知られてしまう。
それは、嫌だ……。
また、眦に涙が浮かんで、それが零れてしまう前に腕で目を覆った。
オメガの自分をずっと否定してきたのに、本当の意味で彼と番になれたらと思っている自分に気付く。
「なんて、浅ましいんだ」
ユリスはきつく唇を噛んで、どうにか涙を堪えると、疼きはじめた下肢に気付かない振りをして、布団を頭からかぶって目を閉じた。
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 7
――お父様とはお会いになられない方が良いでしょうね。
ユリスは屋敷の離れに移動した後、ベッドに寝転がって目を閉じながら、先程の妹と交わした会話を思い返していた。
何故父に会わない方が良いのか。それは、分かる。
彼女と同じようにアルファの父も、ユリスの変化に気付くはずだからだ。そして、その「相手」を特定するのも容易だろう。
母について言及されなかったのは、彼女がユリスを視界にも入れたくないとばかりに避けていることを、アンジェリアも承知しているからだ。
だが、そんなこと可能なのだろうか。
殆ど顔を合わせることのない父とはいえ、仕事上で接する機会はある。
(……相談できる相手がいない。それこそ、ルベルト様くらいしか――)
だが、ユリスはぷるぷると首を横に振った。
「駄目だ。殿下にだけは頼れない」
もし相談などすれば、自分がオメガとして欠陥品であることも知られてしまう。
それは、嫌だ……。
また、眦に涙が浮かんで、それが零れてしまう前に腕で目を覆った。
オメガの自分をずっと否定してきたのに、本当の意味で彼と番になれたらと思っている自分に気付く。
「なんて、浅ましいんだ」
ユリスはきつく唇を噛んで、どうにか涙を堪えると、疼きはじめた下肢に気付かない振りをして、布団を頭からかぶって目を閉じた。
2026/02/01 14:27:41
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 6
ユリスは暗い気分のまま、馬車を降りた。
これから何日続くか分からない発情を一人で乗り越えなければいけない。薬で収まっている今のうちに、できる準備をしておかねば。
だが、こういう時に限って間の悪いもので、玄関扉を開けたユリスは、そのまま固まってしまった。
「……アンジェリア」
名前を呼ばれた彼女――六つ年下の妹アンジェリアは、微かに眉をひそめた。
「随分とお早いお帰りですのね、お兄様」
「うん……。その、体調が…悪くなって。帰らせてもらった」
「そうですの」
ユリスは深く追及される前に、彼女の横を通り過ぎようとした。しかし――
「お待ちなさいませ」
振り返ると、彼女はしかめっ面をしながら、ユリスに近付いてくる。
「な、なに……」
「じっとなさい」
アンジェリアは、すんとユリスの首元で鼻をならす。そして、ますます眉間に皺を寄せた。
「お兄様……、どこの馬の骨と番って参りましたの」
「!」
ハッとして一歩後ずさるが、何も答えられなかった。
そうだ。彼女はアルファ。血縁者は血が近ければ近いほど発情の誘発を受けることはないが、当然、ユリスの発するフェロモンの違いには気付く。
「お兄様」
「それは、その……」
はくはくと口を開閉させるが、何も言葉が出てこない。
アンジェリアは目を眇めて、ユリスの様子を探るように見つめると、小さく溜息をついた。
「まあ、いいです。答えたくなければ。興味もありませんし。ですが――」
彼女は一呼吸おいて、じっとユリスを見上げながら言った。
「お父様とはお会いになられない方が良いでしょうね。何故かは、分かりますわね」
「……うん」
「なら結構」
それだけ言うと、アンジェリアは身を翻して去って行った。
ユリスはその背中をただ見送るしかできなかった。
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 6
ユリスは暗い気分のまま、馬車を降りた。
これから何日続くか分からない発情を一人で乗り越えなければいけない。薬で収まっている今のうちに、できる準備をしておかねば。
だが、こういう時に限って間の悪いもので、玄関扉を開けたユリスは、そのまま固まってしまった。
「……アンジェリア」
名前を呼ばれた彼女――六つ年下の妹アンジェリアは、微かに眉をひそめた。
「随分とお早いお帰りですのね、お兄様」
「うん……。その、体調が…悪くなって。帰らせてもらった」
「そうですの」
ユリスは深く追及される前に、彼女の横を通り過ぎようとした。しかし――
「お待ちなさいませ」
振り返ると、彼女はしかめっ面をしながら、ユリスに近付いてくる。
「な、なに……」
「じっとなさい」
アンジェリアは、すんとユリスの首元で鼻をならす。そして、ますます眉間に皺を寄せた。
「お兄様……、どこの馬の骨と番って参りましたの」
「!」
ハッとして一歩後ずさるが、何も答えられなかった。
そうだ。彼女はアルファ。血縁者は血が近ければ近いほど発情の誘発を受けることはないが、当然、ユリスの発するフェロモンの違いには気付く。
「お兄様」
「それは、その……」
はくはくと口を開閉させるが、何も言葉が出てこない。
アンジェリアは目を眇めて、ユリスの様子を探るように見つめると、小さく溜息をついた。
「まあ、いいです。答えたくなければ。興味もありませんし。ですが――」
彼女は一呼吸おいて、じっとユリスを見上げながら言った。
「お父様とはお会いになられない方が良いでしょうね。何故かは、分かりますわね」
「……うん」
「なら結構」
それだけ言うと、アンジェリアは身を翻して去って行った。
ユリスはその背中をただ見送るしかできなかった。
2026/02/01 14:26:45
2026/02/01 14:25:39
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 17
行為の疲れが出たのか、眠ってしまったアレイストの頭を、ロウェルはやわらかく撫でる。
あどけなく眠る姿を見て、「愛しいな」という言葉が自然と湧いてくる。
一体いつからそんな風に思うようになったのだろう、と考えて、ロウェルは肩を竦めた。
彼と初めて会った時、ゆりかごの中で眠る姿を見た時には、既にこの感情を抱いていた気がする。
だからこそ、そんな彼を傷付ける結果を生んでしまったのが自分だということが、あまりに受け入れ難く、苦しかったのだ。
自分の全てを擲ってでも、彼に尽くしたいと、そうしなければならないと思うほどに。
ロウェルはアレイストの髪に指を通す。
その時、ふっとアレイストの目が開いた。
「あ、悪い。起こしたか?」
「ん……、いや……」
どけようとした手を、寝惚け眼のアレイストが掴んで、頬を寄せる。
「ど、どうした……?」
すりすりといつまでも離そうとしないアレイストに、照れと戸惑いとを感じながら訊ねると、彼はんー……、と小さく呻いてから、ぽつりと呟いた。
「僕さ、ロウェルの手、すきだな……。たぶん、前からずっと」
ふんわりと微笑みながら、アレイストはロウェルの指にキスをする。
「あとさ、寝てる時……たまに頭にキスしてただろ。あれも……」
半分眠りながら呟かれた言葉に、ロウェルは顔をぼっと赤らめる。
「え、あ、ま、まさかあの時も、起きてたのか!? ――って、もう寝てる!?」
再びすぴすぴと眠りはじめたアレイストに腕を取られたまま、ロウェルは一人羞恥で呻く。詳しい話を聞きたい、が、叩き起こすわけにもいかず、途方に暮れた。
「あぁ……、もう……。起きたら覚えてろよ……」
大きな溜息をついたロウェルは、穏やかに眠るアレイストに苦笑して、自身もその隣へ身を横たえる。
それから、もう遠慮することなく、その身体を抱き寄せた。
「次の転居先はどこがいいかな……。あたたかい所の方がいいよな。アレイストにも希望を聞いて――……」
腕の中にすっぽり収まるアレイストに、ロウェルは胸の奥にずっと凝っていた罪悪感という冷たい氷が解けていくのを感じた。
氷が融ければ春が来る。
二人ならば、これから訪れる困難もきっと乗り越えていけるだろう。
ロウェルは、やっと手に入れた大事な大事な宝物を、ぎゅうっと抱きしめて、穏やかな眠りに身を委ねた。
完
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 17
行為の疲れが出たのか、眠ってしまったアレイストの頭を、ロウェルはやわらかく撫でる。
あどけなく眠る姿を見て、「愛しいな」という言葉が自然と湧いてくる。
一体いつからそんな風に思うようになったのだろう、と考えて、ロウェルは肩を竦めた。
彼と初めて会った時、ゆりかごの中で眠る姿を見た時には、既にこの感情を抱いていた気がする。
だからこそ、そんな彼を傷付ける結果を生んでしまったのが自分だということが、あまりに受け入れ難く、苦しかったのだ。
自分の全てを擲ってでも、彼に尽くしたいと、そうしなければならないと思うほどに。
ロウェルはアレイストの髪に指を通す。
その時、ふっとアレイストの目が開いた。
「あ、悪い。起こしたか?」
「ん……、いや……」
どけようとした手を、寝惚け眼のアレイストが掴んで、頬を寄せる。
「ど、どうした……?」
すりすりといつまでも離そうとしないアレイストに、照れと戸惑いとを感じながら訊ねると、彼はんー……、と小さく呻いてから、ぽつりと呟いた。
「僕さ、ロウェルの手、すきだな……。たぶん、前からずっと」
ふんわりと微笑みながら、アレイストはロウェルの指にキスをする。
「あとさ、寝てる時……たまに頭にキスしてただろ。あれも……」
半分眠りながら呟かれた言葉に、ロウェルは顔をぼっと赤らめる。
「え、あ、ま、まさかあの時も、起きてたのか!? ――って、もう寝てる!?」
再びすぴすぴと眠りはじめたアレイストに腕を取られたまま、ロウェルは一人羞恥で呻く。詳しい話を聞きたい、が、叩き起こすわけにもいかず、途方に暮れた。
「あぁ……、もう……。起きたら覚えてろよ……」
大きな溜息をついたロウェルは、穏やかに眠るアレイストに苦笑して、自身もその隣へ身を横たえる。
それから、もう遠慮することなく、その身体を抱き寄せた。
「次の転居先はどこがいいかな……。あたたかい所の方がいいよな。アレイストにも希望を聞いて――……」
腕の中にすっぽり収まるアレイストに、ロウェルは胸の奥にずっと凝っていた罪悪感という冷たい氷が解けていくのを感じた。
氷が融ければ春が来る。
二人ならば、これから訪れる困難もきっと乗り越えていけるだろう。
ロウェルは、やっと手に入れた大事な大事な宝物を、ぎゅうっと抱きしめて、穏やかな眠りに身を委ねた。
完
2026/02/01 14:23:16
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 16
「――っ!! や、あぁ……! もう、むり――っ」
後ろと前とを同時に指で刺激されて、身体が跳ねる。
「だいじょうぶだから。ほらゆっくり息して」
ロウェルの言葉に、アレイストは無言でぶんぶんと首を横に振った。
達きそうで達かせてもらえないまま、どのくらい時間が経っただろう。高い位置にあった陽が落ちて、部屋の中はいつの間にか薄暗くなっている。ベッドの上で裸に剥かれて喘ぐばかりのアレイストは、絶妙に動くロウェルの手に翻弄され続けている。
先走りと潤滑油でめちゃくちゃになっている下肢は、もうどこを触られても感じてしまう。
八年前、自分がロウェルを抱いていた時、どれほど雑なことをしていたのかということを、あらためて思い知らされるような気分だった。
そんなことを考えていることを目敏く見つけたロウェルは、目を眇めて、耳元で囁く。
「余計なこと考えてる?」
「あ、だって……、っ――!」
体内にあるしこりをぐりっと押し潰されて、声にならない叫びを上げる。目の前が真っ白になってチカチカした。だが、勃ち上がった陰茎の根本を押さえられていて、射精させてもらえない。頭がとろとろふわふわしたまま、もうずっと戻れないでいる。
きもちいい。気持ちよすぎて、苦しいほど。
まさしく、「何も考えられない」。
「ぁ、は……、あぁん……っ」
媚びた声が口から漏れる。それを恥ずかしいと思う暇もないほど、快感が押し寄せていた。
けれど、と生理的な涙で滲んだ視界で、下方を見る。
ロウェルはアレイストに快楽を与えるばかりで、シャツのボタンすら外していない。精々、袖を捲った程度だ。
ズボンは痛そうなほど張り詰めているのに。
「っ、なぁ……、挿れないのか……?」
右足を動かしてそれを足の甲で擦ると、びくりと彼の身体が震えた。
「アレイスト……」
ロウェルと視線が絡んだ。彼は何かに逡巡するように視線を彷徨わせた後、再びこちらを見て、呟く。
「良いのか?」
なんとなく「後悔しないか」と聞かれているような気がした。
ロウェルに抱かれれば、二人の仲は何か決定的なものになってしまう予感がある。
これまでの交わりには伴わなかった、心に触れ合うようなそれが、関係を変えてしまうような。
ここで頷けば、彼と二度と離れられなくなるのだろうな、と不意に思う。
だが、アレイストはふっと笑った。
そして、動いてくれない左足を、どうにか太腿を動かしてロウェルの前に持ってくる。
「今更だろ」
「…………そうだな」
もう二十年以上も前になるあの日から、きっと離れては生きられなかったのだろうから。
ロウェルは恭しくその左足に触れて、甲にキスをした。
感触は何も感じない。けれど、その仕草で彼の優しく労るような思いは伝わってくる。
ロウェルはそのまま左足のふくら脛にもキスをして、どんどん上へ上がってくる。
その唇が腿へと到達した時、ぴくんと足が震えた。その反応にロウェルは目を細めて、内腿を強く吸って跡を残す。その上を更に舌が擽った。
「ちょ、ロウェル……」
先程までよりゆるい刺激に、どこかじれったさを感じて彼の名を呼んだ。アレイストの焦燥を察したのか、ロウェルはくすりと笑って、頷いた。
そして、身体を少し起こすとズボンの留め金を外し、サッと服を全部脱ぎ去ってしまう。
そこに現れた太い屹立にアレイストは息を飲んだ。
少々怖気付いていると、ロウェルが苦笑しながらアレイストの腕を引く。
「あっ……」
胡座をかいたロウェルの膝の上に、向かい合うように乗せられて腰を掴まれる。
どうしたらいいのか戸惑っていると、ロウェルにぎゅっと抱きしめられて、背中を撫でられた。
「大丈夫」
その言葉でやっと身体の力が抜けて、アレイストは彼の首にしがみつくように腕を回した。
「っ!」
後孔にぴとりと熱が添えられる。そして、ゆっくりと腰が下ろされていって、くちゅりという水音共に後ろが押し開かれていく。
「あ、あぁ……っ」
事前に散々弄られたせいか、痛みはない。だが、指とは全く違う圧迫感に息が詰まった。
宥めるように背中をロウェルの手が撫でる。その刺激に右膝の力が抜けて、左側の腰を掴むロウェルの手に体重がかかる。その反動でじゅぷりという卑猥な音が耳を犯した。
「んっ、……っは、あ……」
そうしている間にもゆっくりと挿入は進んで、屹立の一番太いところが、中へと挿入った。
ビクンと背中が跳ねて、ロウェルにしがみつく腕にも力が籠もった。
その後は殆ど抵抗もなく、ずるずると腰を下ろしていく。
「あ、っ、……あぁ……ん、ふ……」
そして、最後の少しの所でロウェルの手が離れて、奥をくんっと突かれた。
「んあっ!」
ぴゅっと自身の陰茎から白濁が飛び、軽く達したのだと知る。
その白いものがロウェルの肌にも散っている。
その光景が、二人が本当に近い位置にいることを象徴しているように見えて、胸がいっぱいになった。
「……ロウェル」
「うん?」
「僕も……幸せになれるかな」
ふと、穏やかに微笑む姉の姿が浮かんだ。
いつか自分もあんな表情を浮かべられるようになれるだろうか。
ロウェルは少し悩むように沈黙した後、アレイストの髪を撫でた。
「分からない。……けどさ、二人でそうなれる努力をしてみたいと思う。アレイストはどうだ?」
ロウェルの言葉に、ふとアレイストも笑みを零した。
無闇に「幸せにする」などと言われるより、余程安心できる気がした。
「そうだな。ロウェルとなら、できる気がする」
アレイスト少し顔を上げて、ロウェルを見た。
そして、どちらからともなく口付けを交わす。
やっと心ごと抱き合えている。
そんな実感を覚えながら、アレイストはキスに溺れていった。
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 16
「――っ!! や、あぁ……! もう、むり――っ」
後ろと前とを同時に指で刺激されて、身体が跳ねる。
「だいじょうぶだから。ほらゆっくり息して」
ロウェルの言葉に、アレイストは無言でぶんぶんと首を横に振った。
達きそうで達かせてもらえないまま、どのくらい時間が経っただろう。高い位置にあった陽が落ちて、部屋の中はいつの間にか薄暗くなっている。ベッドの上で裸に剥かれて喘ぐばかりのアレイストは、絶妙に動くロウェルの手に翻弄され続けている。
先走りと潤滑油でめちゃくちゃになっている下肢は、もうどこを触られても感じてしまう。
八年前、自分がロウェルを抱いていた時、どれほど雑なことをしていたのかということを、あらためて思い知らされるような気分だった。
そんなことを考えていることを目敏く見つけたロウェルは、目を眇めて、耳元で囁く。
「余計なこと考えてる?」
「あ、だって……、っ――!」
体内にあるしこりをぐりっと押し潰されて、声にならない叫びを上げる。目の前が真っ白になってチカチカした。だが、勃ち上がった陰茎の根本を押さえられていて、射精させてもらえない。頭がとろとろふわふわしたまま、もうずっと戻れないでいる。
きもちいい。気持ちよすぎて、苦しいほど。
まさしく、「何も考えられない」。
「ぁ、は……、あぁん……っ」
媚びた声が口から漏れる。それを恥ずかしいと思う暇もないほど、快感が押し寄せていた。
けれど、と生理的な涙で滲んだ視界で、下方を見る。
ロウェルはアレイストに快楽を与えるばかりで、シャツのボタンすら外していない。精々、袖を捲った程度だ。
ズボンは痛そうなほど張り詰めているのに。
「っ、なぁ……、挿れないのか……?」
右足を動かしてそれを足の甲で擦ると、びくりと彼の身体が震えた。
「アレイスト……」
ロウェルと視線が絡んだ。彼は何かに逡巡するように視線を彷徨わせた後、再びこちらを見て、呟く。
「良いのか?」
なんとなく「後悔しないか」と聞かれているような気がした。
ロウェルに抱かれれば、二人の仲は何か決定的なものになってしまう予感がある。
これまでの交わりには伴わなかった、心に触れ合うようなそれが、関係を変えてしまうような。
ここで頷けば、彼と二度と離れられなくなるのだろうな、と不意に思う。
だが、アレイストはふっと笑った。
そして、動いてくれない左足を、どうにか太腿を動かしてロウェルの前に持ってくる。
「今更だろ」
「…………そうだな」
もう二十年以上も前になるあの日から、きっと離れては生きられなかったのだろうから。
ロウェルは恭しくその左足に触れて、甲にキスをした。
感触は何も感じない。けれど、その仕草で彼の優しく労るような思いは伝わってくる。
ロウェルはそのまま左足のふくら脛にもキスをして、どんどん上へ上がってくる。
その唇が腿へと到達した時、ぴくんと足が震えた。その反応にロウェルは目を細めて、内腿を強く吸って跡を残す。その上を更に舌が擽った。
「ちょ、ロウェル……」
先程までよりゆるい刺激に、どこかじれったさを感じて彼の名を呼んだ。アレイストの焦燥を察したのか、ロウェルはくすりと笑って、頷いた。
そして、身体を少し起こすとズボンの留め金を外し、サッと服を全部脱ぎ去ってしまう。
そこに現れた太い屹立にアレイストは息を飲んだ。
少々怖気付いていると、ロウェルが苦笑しながらアレイストの腕を引く。
「あっ……」
胡座をかいたロウェルの膝の上に、向かい合うように乗せられて腰を掴まれる。
どうしたらいいのか戸惑っていると、ロウェルにぎゅっと抱きしめられて、背中を撫でられた。
「大丈夫」
その言葉でやっと身体の力が抜けて、アレイストは彼の首にしがみつくように腕を回した。
「っ!」
後孔にぴとりと熱が添えられる。そして、ゆっくりと腰が下ろされていって、くちゅりという水音共に後ろが押し開かれていく。
「あ、あぁ……っ」
事前に散々弄られたせいか、痛みはない。だが、指とは全く違う圧迫感に息が詰まった。
宥めるように背中をロウェルの手が撫でる。その刺激に右膝の力が抜けて、左側の腰を掴むロウェルの手に体重がかかる。その反動でじゅぷりという卑猥な音が耳を犯した。
「んっ、……っは、あ……」
そうしている間にもゆっくりと挿入は進んで、屹立の一番太いところが、中へと挿入った。
ビクンと背中が跳ねて、ロウェルにしがみつく腕にも力が籠もった。
その後は殆ど抵抗もなく、ずるずると腰を下ろしていく。
「あ、っ、……あぁ……ん、ふ……」
そして、最後の少しの所でロウェルの手が離れて、奥をくんっと突かれた。
「んあっ!」
ぴゅっと自身の陰茎から白濁が飛び、軽く達したのだと知る。
その白いものがロウェルの肌にも散っている。
その光景が、二人が本当に近い位置にいることを象徴しているように見えて、胸がいっぱいになった。
「……ロウェル」
「うん?」
「僕も……幸せになれるかな」
ふと、穏やかに微笑む姉の姿が浮かんだ。
いつか自分もあんな表情を浮かべられるようになれるだろうか。
ロウェルは少し悩むように沈黙した後、アレイストの髪を撫でた。
「分からない。……けどさ、二人でそうなれる努力をしてみたいと思う。アレイストはどうだ?」
ロウェルの言葉に、ふとアレイストも笑みを零した。
無闇に「幸せにする」などと言われるより、余程安心できる気がした。
「そうだな。ロウェルとなら、できる気がする」
アレイスト少し顔を上げて、ロウェルを見た。
そして、どちらからともなく口付けを交わす。
やっと心ごと抱き合えている。
そんな実感を覚えながら、アレイストはキスに溺れていった。
2026/02/01 14:21:53
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 15
家に戻るまで、アレイストたちは互いに無言だった。
歩調の遅い自分に合わせた歩みは、じれったくなるほど長く感じて、言い知れぬ焦燥が募る。
セレンティーネの見せた、穏やかな微笑みが、心に引っかかっていたのも原因かもしれない。
王族の軛、周囲の期待、諸々のものに囚われ藻掻いていたのに、彼女一人だけ抜け出して手の届かない所へいってしまったような気がして。
自分はまだ囚われたまま。
考えないように、見ないように、そう振る舞っていただけだ。
長い時間をかけて家まで辿り着き、玄関扉を締める。
すると、それまでまるで我慢していたかのように、涙が次々に零れ落ちる。
「ロウェル……」
涙を流れ落ちるままに、アレイストは振り返った彼を見上げた。
「……たすけて」
腕を伸ばせば抱き上げられる。
彼の首にぎゅっと抱きついて懇願する。
「もう……、なにもかんがえたくない」
ロウェルはアレイストが願えばなんでも叶えてくれる。
彼の罪悪感に付け込んで、依存することでしか生きられなくなった自分は、姉の目にはどんな風に映っていたのだろう。
そんなことを思いながら。
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 15
家に戻るまで、アレイストたちは互いに無言だった。
歩調の遅い自分に合わせた歩みは、じれったくなるほど長く感じて、言い知れぬ焦燥が募る。
セレンティーネの見せた、穏やかな微笑みが、心に引っかかっていたのも原因かもしれない。
王族の軛、周囲の期待、諸々のものに囚われ藻掻いていたのに、彼女一人だけ抜け出して手の届かない所へいってしまったような気がして。
自分はまだ囚われたまま。
考えないように、見ないように、そう振る舞っていただけだ。
長い時間をかけて家まで辿り着き、玄関扉を締める。
すると、それまでまるで我慢していたかのように、涙が次々に零れ落ちる。
「ロウェル……」
涙を流れ落ちるままに、アレイストは振り返った彼を見上げた。
「……たすけて」
腕を伸ばせば抱き上げられる。
彼の首にぎゅっと抱きついて懇願する。
「もう……、なにもかんがえたくない」
ロウェルはアレイストが願えばなんでも叶えてくれる。
彼の罪悪感に付け込んで、依存することでしか生きられなくなった自分は、姉の目にはどんな風に映っていたのだろう。
そんなことを思いながら。
2026/02/01 14:20:50
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 14
もちろん、アレイストは反射的に逃げようとした。
だが、彼女から逃げ切れる足などあるはずもなく、足が縺れて転びそうになった所を助けられるという有り様だった。
そして、現在。
アレイストは街中にある茶店の個室で、セレンティーネと向かい合っていた。
「で。何故、誘拐された王太子殿下がこんなところにいるんだ」
人払いされた室内には、二人の他は誰もいない。
「姉上こそ……」
「私はお忍びで視察だ。アキュイラの治水事業の参考にしようと」
どうやら旅行名目で、仕事をしにきたらしい。まだこの街の領主とは会っておらず、普段の様子を見に来たようだ。どうりで周囲に彼女以外の誰もいないはずである。
それがひとまずはアレイストに幸いしているが、その幸運が続くかはこれからの交渉次第だ。
しかし、「誘拐」されたのも、それにもかかわらず他国のふらふらしていたのも事実であるため、上手い誤魔化し方がまったく浮かばない。
黙り込んでいると、セレンティーネが嘆息する。
「私は話したぞ。お前はどうなんだ」
「それは、その……」
セレンティーネは、答えられないでいるアレイストを、じっと見つめる。
「『誘拐』が狂言……、なわけはないな。実際お前はここにいるのだし。じゃあ、お前は納得して連れ去られた?」
「……っ」
アレイストは相変わらず何も答えられなかったが、その沈黙は肯定と同じだった。
セレンティーネの物言いたげな視線を感じながら、アレイストは思う。
国にいた頃なら、きっと彼女を煙に巻くようなことを言えたはずだ。
もう、「王太子」の仮面をつけることすらできないのか。
そう気付いて、少なくない衝撃を受ける。
「……恋人か?」
「っ、ちが……、あいつはそんなんじゃ……!」
反射的に言い返して、頬が赤らんだ。「恋人」などではないが、「誰か」がいると白状したようなものだ。
セレンティーネも、目を丸くしていた。
「……変わったな、アレイスト」
ぽかんとしたままセレンティーネが言う。驚いてはいるようだが、その声音に嫌悪は感じられない。
アレイストは彼女の視線から逃れるように目を逸らして言った。
「それは貴女もでしょう、姉上。昔の貴女なら、王族の責務を放り出していなくなった僕に、憤りを覚えていたはずです」
「……たしかに」
セレンティーネの目が、昔を思い出すように細められた。
「アキュイラに行ったばかりの頃の私なら、これ幸いと王都に戻っていたかもな」
「今は違うんですか」
「まあ……、次世代もいることだし。何より、アキュイラに置いていけないものが沢山できたから」
そういって、笑みを浮かべるセレンティーネは、アレイストが見たこともない顔をしていた。
穏やかで、満ち足りていて、城にいた頃のピリピリとした空気は微塵もない。
姉が、どこか遠くへ行ってしまったような、そんな気がした。
その時、外で店員と誰かが揉めるような声がして、アレイストは顔を上げる。
その瞬間、部屋の扉が開け放たれる。
「アレイスト!」
入ってきたのは、ロウェルだ。ハッとして時間を確認すると、昼などとっくに回ってしまっていた。
部屋の中へ入ってきたロウェルは、アレイストの腕を引いて、きつく抱き締める。
「ちょ……」
苦しい、と背中を叩くが、彼は腕を解いてはくれない。アレイストを腕の中に閉じ込めたまま、セレンティーネの方を見る。
「……セレンティーネ殿下」
殆ど睨むような目を向けられたはずのセレンティーネは、ぱちりと目を瞬かせると、アレイストとロウェルの顔を交互に見て、納得したように頷いた。
「なるほど。貴方が『あいつ』か」
そしてセレンティーネは、にっこり笑って立ち上がると、アレイストたちに背を向けて歩き出した。
部屋を出るところで立ち止まって、振り返る。
「今日は楽しい時間をありがとう。いなくなった弟と似た青年と話せて感無量だ。ではな」
それだけ言うと、ぽかんとする二人を置いて、彼女は去っていった。
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 14
もちろん、アレイストは反射的に逃げようとした。
だが、彼女から逃げ切れる足などあるはずもなく、足が縺れて転びそうになった所を助けられるという有り様だった。
そして、現在。
アレイストは街中にある茶店の個室で、セレンティーネと向かい合っていた。
「で。何故、誘拐された王太子殿下がこんなところにいるんだ」
人払いされた室内には、二人の他は誰もいない。
「姉上こそ……」
「私はお忍びで視察だ。アキュイラの治水事業の参考にしようと」
どうやら旅行名目で、仕事をしにきたらしい。まだこの街の領主とは会っておらず、普段の様子を見に来たようだ。どうりで周囲に彼女以外の誰もいないはずである。
それがひとまずはアレイストに幸いしているが、その幸運が続くかはこれからの交渉次第だ。
しかし、「誘拐」されたのも、それにもかかわらず他国のふらふらしていたのも事実であるため、上手い誤魔化し方がまったく浮かばない。
黙り込んでいると、セレンティーネが嘆息する。
「私は話したぞ。お前はどうなんだ」
「それは、その……」
セレンティーネは、答えられないでいるアレイストを、じっと見つめる。
「『誘拐』が狂言……、なわけはないな。実際お前はここにいるのだし。じゃあ、お前は納得して連れ去られた?」
「……っ」
アレイストは相変わらず何も答えられなかったが、その沈黙は肯定と同じだった。
セレンティーネの物言いたげな視線を感じながら、アレイストは思う。
国にいた頃なら、きっと彼女を煙に巻くようなことを言えたはずだ。
もう、「王太子」の仮面をつけることすらできないのか。
そう気付いて、少なくない衝撃を受ける。
「……恋人か?」
「っ、ちが……、あいつはそんなんじゃ……!」
反射的に言い返して、頬が赤らんだ。「恋人」などではないが、「誰か」がいると白状したようなものだ。
セレンティーネも、目を丸くしていた。
「……変わったな、アレイスト」
ぽかんとしたままセレンティーネが言う。驚いてはいるようだが、その声音に嫌悪は感じられない。
アレイストは彼女の視線から逃れるように目を逸らして言った。
「それは貴女もでしょう、姉上。昔の貴女なら、王族の責務を放り出していなくなった僕に、憤りを覚えていたはずです」
「……たしかに」
セレンティーネの目が、昔を思い出すように細められた。
「アキュイラに行ったばかりの頃の私なら、これ幸いと王都に戻っていたかもな」
「今は違うんですか」
「まあ……、次世代もいることだし。何より、アキュイラに置いていけないものが沢山できたから」
そういって、笑みを浮かべるセレンティーネは、アレイストが見たこともない顔をしていた。
穏やかで、満ち足りていて、城にいた頃のピリピリとした空気は微塵もない。
姉が、どこか遠くへ行ってしまったような、そんな気がした。
その時、外で店員と誰かが揉めるような声がして、アレイストは顔を上げる。
その瞬間、部屋の扉が開け放たれる。
「アレイスト!」
入ってきたのは、ロウェルだ。ハッとして時間を確認すると、昼などとっくに回ってしまっていた。
部屋の中へ入ってきたロウェルは、アレイストの腕を引いて、きつく抱き締める。
「ちょ……」
苦しい、と背中を叩くが、彼は腕を解いてはくれない。アレイストを腕の中に閉じ込めたまま、セレンティーネの方を見る。
「……セレンティーネ殿下」
殆ど睨むような目を向けられたはずのセレンティーネは、ぱちりと目を瞬かせると、アレイストとロウェルの顔を交互に見て、納得したように頷いた。
「なるほど。貴方が『あいつ』か」
そしてセレンティーネは、にっこり笑って立ち上がると、アレイストたちに背を向けて歩き出した。
部屋を出るところで立ち止まって、振り返る。
「今日は楽しい時間をありがとう。いなくなった弟と似た青年と話せて感無量だ。ではな」
それだけ言うと、ぽかんとする二人を置いて、彼女は去っていった。
2026/02/01 14:20:00
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 13
ロウェルがアレイストの不在に気付くより少し前――。
アレイストは街中に張り巡らされた水路沿いを歩いていた。
市街地ほど人は多くないが、きちんと整備されていて治安も悪くないその場所は、アレイストにとって散策には都合が良かった。
難点を上げるとするならば、景色に代わり映えがないことくらいか。
少し前まで、体調を回復させるためにとベッドの住人となっていたアレイストは、今はその間に落ちてしまった筋力を回復させんと目下努力中だ。
ロウェルと二人、ぽつぽつと会話を交わしながら歩くのもいいが、たまには一人で気ままに過ごすのも悪くないな、なんて思う。
とはいえ、とアレイストは空を仰いだ。
太陽がかなり高い位置に差し掛かっている。ロウェルは昼頃には一度戻ると言っていたため、そろそろ帰宅しておかねば心配させてしまうだろう。
つい忘れてしまいそうになるが、自分たちは逃亡中の身だ。特に、アレイストの顔は追手となる王国兵に周知されているはずだ。自分があまりふらふらと出歩くのは良くない。
それを許してくれるロウェルは、かなり自分に甘い。
アレイストはふと周囲を見渡して、ここからどう帰るのが一番早いだろうかと計算して、そちらに方向を変えた。
一度大通りまで出ることに決めたアレイストは、徐々に耳に届きはじめた人のざわめきを、聞くともなく聞きながら歩調を速める。とはいっても、杖をつきながらなので限界はあるが。
だがその時、視界に印象的な銀髪が映って、思わず足を止めた。
輝く銀色の髪――。それは姉と同じ……。
「――姉、上?」
つい口からついて出た言葉に、その女が振り返って目を見開いた。
「アレイスト……?」
そこにいたのは、紛れもなく異母姉セレンティーネその人だった。
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 13
ロウェルがアレイストの不在に気付くより少し前――。
アレイストは街中に張り巡らされた水路沿いを歩いていた。
市街地ほど人は多くないが、きちんと整備されていて治安も悪くないその場所は、アレイストにとって散策には都合が良かった。
難点を上げるとするならば、景色に代わり映えがないことくらいか。
少し前まで、体調を回復させるためにとベッドの住人となっていたアレイストは、今はその間に落ちてしまった筋力を回復させんと目下努力中だ。
ロウェルと二人、ぽつぽつと会話を交わしながら歩くのもいいが、たまには一人で気ままに過ごすのも悪くないな、なんて思う。
とはいえ、とアレイストは空を仰いだ。
太陽がかなり高い位置に差し掛かっている。ロウェルは昼頃には一度戻ると言っていたため、そろそろ帰宅しておかねば心配させてしまうだろう。
つい忘れてしまいそうになるが、自分たちは逃亡中の身だ。特に、アレイストの顔は追手となる王国兵に周知されているはずだ。自分があまりふらふらと出歩くのは良くない。
それを許してくれるロウェルは、かなり自分に甘い。
アレイストはふと周囲を見渡して、ここからどう帰るのが一番早いだろうかと計算して、そちらに方向を変えた。
一度大通りまで出ることに決めたアレイストは、徐々に耳に届きはじめた人のざわめきを、聞くともなく聞きながら歩調を速める。とはいっても、杖をつきながらなので限界はあるが。
だがその時、視界に印象的な銀髪が映って、思わず足を止めた。
輝く銀色の髪――。それは姉と同じ……。
「――姉、上?」
つい口からついて出た言葉に、その女が振り返って目を見開いた。
「アレイスト……?」
そこにいたのは、紛れもなく異母姉セレンティーネその人だった。
2026/02/01 14:18:31
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 12
とある国で起きた王太子殿下の誘拐事件。
城内から誰にも気取られぬまま成し遂げられたというそれは、半月ばかり経った今も、犯人の手がかりすら掴めていないらしい。
「……アミリア妃には感謝だなぁ」
ロウェルはウィレミニア国内に残してきた部下からの報告書を読みながら嘆息する。
もっとも、ロウェルがその「誘拐事件」の犯人だと知るのは極一部の人間であるため、この報告書も単なる王国の情勢に関する報告に過ぎない。
海を超えた別の国に居を移したロウェルの元に情報が届くまでには数日かかるが、今もアミリアがロウェルと遭遇したことを言っていないとなると、暫くは安心してよさそうだ。
その時、ふっと気配を感じてロウェルは振り返る。
「ロウェル……」
「おはよう、アレイスト」
シーツと左足を引き摺りながらこちらへ来るアレイストは、起きたばかりなのか、眠そうな目を擦っている。
海の見えるバルコニーから室内へと戻ると、アレイストが腰に巻き付いてきた。
「まだ眠いか? 朝食作るけど、食べられそ?」
「うぅん……」
ロウェルの肩に頭をぐりぐり押し付けつつ、アレイストは頷いた。ロウェルはそんな彼の身体を抱き上げて、ダイニングへと連れて行く。
椅子へ座らせて額に口付けると、ふにゃりと表情を緩める。
「うっ……」
そのままもう少しキスしていたいのをどうにか堪えて、キッチンへ向かう。
アレイストはここに来てから、とても甘えたになった。
ロウェルはそんな彼の変化に、いまだ慣れそうにもなかった。
「アレイスト、俺、今日は少し出かけるつもりなんだけど……。お前はどうする?」
あの夜、彼を連れ出した日から、アレイストも徐々に体調が回復している。ロウェルは彼の世話を主にしつつ、情報屋の国外拠点作りを細々とはじめていた。
夜もロウェルが傍にいればよく眠れるようで、彼を抱きしめて眠るのが日常となっていた。
――あの夜、アレイストが呟いた「抱いてほしい」という願いに関しては、お互い触れないまま、清い関係が続いている。
ロウェルとしては、アレイストが安心していられるならなんでもいい。
ただここは、海に面した街ということもあり、ウィレミニアからの来訪者も多い。彼の体力が回復し次第、居住地は移すつもりであったが――、概ね平和で穏やかな日々が続いていた。
「今日は……、少し散歩をしてくるよ」
アレイストの声に、ロウェルが振り返って首を傾げる。
「一緒じゃなくて平気か?」
足が悪い彼は、何かあった時走って逃げることもできない。目を離したところで何かあったら――、という不安は今も大きい。
だが、アレイストはくすりと笑って、肩を竦めた。
「過保護め。僕はもう子供じゃないぞ。ちょっと歩いてくるくらい平気だ。……お前が帰る頃には、ちゃんと家にいるから」
しかし、昼過ぎになってロウェルが戻った時、アレイストの姿はそこにはなかったのだ。
#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 12
とある国で起きた王太子殿下の誘拐事件。
城内から誰にも気取られぬまま成し遂げられたというそれは、半月ばかり経った今も、犯人の手がかりすら掴めていないらしい。
「……アミリア妃には感謝だなぁ」
ロウェルはウィレミニア国内に残してきた部下からの報告書を読みながら嘆息する。
もっとも、ロウェルがその「誘拐事件」の犯人だと知るのは極一部の人間であるため、この報告書も単なる王国の情勢に関する報告に過ぎない。
海を超えた別の国に居を移したロウェルの元に情報が届くまでには数日かかるが、今もアミリアがロウェルと遭遇したことを言っていないとなると、暫くは安心してよさそうだ。
その時、ふっと気配を感じてロウェルは振り返る。
「ロウェル……」
「おはよう、アレイスト」
シーツと左足を引き摺りながらこちらへ来るアレイストは、起きたばかりなのか、眠そうな目を擦っている。
海の見えるバルコニーから室内へと戻ると、アレイストが腰に巻き付いてきた。
「まだ眠いか? 朝食作るけど、食べられそ?」
「うぅん……」
ロウェルの肩に頭をぐりぐり押し付けつつ、アレイストは頷いた。ロウェルはそんな彼の身体を抱き上げて、ダイニングへと連れて行く。
椅子へ座らせて額に口付けると、ふにゃりと表情を緩める。
「うっ……」
そのままもう少しキスしていたいのをどうにか堪えて、キッチンへ向かう。
アレイストはここに来てから、とても甘えたになった。
ロウェルはそんな彼の変化に、いまだ慣れそうにもなかった。
「アレイスト、俺、今日は少し出かけるつもりなんだけど……。お前はどうする?」
あの夜、彼を連れ出した日から、アレイストも徐々に体調が回復している。ロウェルは彼の世話を主にしつつ、情報屋の国外拠点作りを細々とはじめていた。
夜もロウェルが傍にいればよく眠れるようで、彼を抱きしめて眠るのが日常となっていた。
――あの夜、アレイストが呟いた「抱いてほしい」という願いに関しては、お互い触れないまま、清い関係が続いている。
ロウェルとしては、アレイストが安心していられるならなんでもいい。
ただここは、海に面した街ということもあり、ウィレミニアからの来訪者も多い。彼の体力が回復し次第、居住地は移すつもりであったが――、概ね平和で穏やかな日々が続いていた。
「今日は……、少し散歩をしてくるよ」
アレイストの声に、ロウェルが振り返って首を傾げる。
「一緒じゃなくて平気か?」
足が悪い彼は、何かあった時走って逃げることもできない。目を離したところで何かあったら――、という不安は今も大きい。
だが、アレイストはくすりと笑って、肩を竦めた。
「過保護め。僕はもう子供じゃないぞ。ちょっと歩いてくるくらい平気だ。……お前が帰る頃には、ちゃんと家にいるから」
しかし、昼過ぎになってロウェルが戻った時、アレイストの姿はそこにはなかったのだ。
2026/02/01 14:17:46
作品一覧
改稿版更新中
初稿更新終了
ツンデレ王子様の結婚事情:漫画(字コンテ)・BL
玉座の憧憬 アレイスト×セレンIF:小説・男女恋愛・バッドエンド・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 アレイスト×セレンIF:小説・男女恋愛・バッドエンド・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
初稿更新中
改稿版完結


#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 8
幸い、アルファの発情に誘発されただけのそれは、一晩経つとすっかりなくなっていた。
だが――、いや、だからこそというべきか、発情の熱でうやむやになっていた、身体の痛みを自覚してしまう。初めて男を受け入れた後ろの違和感。それから、項のひりつくような痛みだ。
「……おはようございます」
ルベルトと顔を合わせたくない。
彼と出逢ってから、はじめてそんなことを思ったが、発情が収まった以上、出仕しないわけにもいかない。先延ばしにすればするだけ、一層行きたくないと思ってしまうのは目にみえていたからだ。
「ユリス!」
ルベルトの執務室に入ると、彼が立ち上がって早足で駆け寄ってきた。
「よかった。その……、身体はなんともないか?」
「……はい」
彼の視線を避けるように俯いて、自分の机へ向かおうとする。だが、ルベルトはそれを阻むように前へ立ち塞がってくる。
「ユリス、こっちを向いてくれ。私は……」
「っ!」
頬に手を伸ばされて、ユリスは思わずそれを払いのけた。
パシッと音が二人きりの部屋に、妙に大きく響いた気がする。
ユリスは驚いて目を見開くルベルトを見ていられずに、また視線を逸らした。
「昨日、言いましたよね。私は『アルファの男』。貴方の番になる気はない、と」
「ユリス……、だが」
「昨日のことは事故です。……お互い、正気じゃなかった。違いますか」
「――しかし、私は、お前に……っ」
「責任を感じているなら、……もう、放っておいてください」
「っ……」
ユリスは今度こそルベルトの隣をすり抜けて、席についた。ルベルトも仕方なさげではあったが、椅子に戻っていく。
(……でも、いつまでこれで躱せるだろうか)
番間の妊娠率は非常に高い。中に何度も……、溢れるほどに出されたのも覚えている。通常なら、既に妊娠していても不思議はないくらいなのだ。
ルベルトも、それは当然知っているはずだし、子がいると考えている可能性も高い。
妊娠がはっきりするであろう数ヶ月以内には、再度何かしら話があるはずだ。それは避けられない。
(ああ、でもその前にあれがある)
ユリスは軽く頭痛を覚えて、眉間を揉んだ。
それを心配げに見つめるルベルトの視線には気付かない振りをしながら、仕事に意識を向ける。
彼と、ただのアルファとオメガとして出逢えていたなら――。
そんなありもしない、想像をしながら。