初稿置き場
#夢見る少年と未羽化の蝶
#夢見る少年と未羽化の蝶_挿話3
2
日々はあっという間に過ぎ、体験入所がはじまった。
「――今年の子たちはどういう様子だったかな?」
その初日から一日明け、朝礼が行われる最中、蝶の民研究所の長ライシオンが話の流れで、そう問いかけてきた。どう、と言われても――と思いつつ、エルジュは言葉に迷いながら返答する。
「まだ初日を終えたばかりですので、なんとも……。ああ、でも」
昨日会ったばかりの五人の顔を思い浮かべ、その内の一人だけ印象に残っているのを思い出す。
「レンという学生ですが、彼は他四名に比べても、かなり意欲的なようでした」
エルジュがそう言うと、斜め前に座っていた女性職員が手を上げる。
「わたし覚えてますよ、その子。エルジュくん、質問攻めにされてたでしょ? 困ってておもしろ――大変そうだな、って」
初日の自己紹介の後、エルジュが先導して行われた研究所内の案内でのことだ。半笑いで「面白い」と言いかけた彼女をむっと睨むエルジュだが、あの場に居合わせたのは彼女だけではない。何人か同じように笑いを堪えている姿があった。
「そうか。意欲的なのは結構なことだね」
雰囲気につられるようにライシオンも、くすりと笑っている。だが、年嵩の研究員が真面目な口調で言葉を挟んだ。
「しかし……。そういうことならば、少し注意して見守った方が良いかもしれませんね」
少々警戒するような声音に、ライシオンも笑みを引っ込めて頷いた。
「そうだね。そういうタイプは大方が二種類に分けられる。『我々と志を同じくできる者』か、『興味本位で現場を引っかきまわす者』か……」
神妙に呟いたライシオンは、エルジュに視線を向けた。
「エルジュ、君はどう思う?」
静かな彼の眼差しに、エルジュは小さく首を横に振った。
「後者でなければいいと思いますが……、判断はまだ出来かねます」
それから胸の内で、エルジュはこう付け足した。
ただ、私は彼が少し――苦手だ。
2026/10/19 22:20:57
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日々はあっという間に過ぎ、体験入所がはじまった。
「――今年の子たちはどういう様子だったかな?」
その初日から一日明け、朝礼が行われる最中、蝶の民研究所の長ライシオンが話の流れで、そう問いかけてきた。どう、と言われても――と思いつつ、エルジュは言葉に迷いながら返答する。
「まだ初日を終えたばかりですので、なんとも……。ああ、でも」
昨日会ったばかりの五人の顔を思い浮かべ、その内の一人だけ印象に残っているのを思い出す。
「レンという学生ですが、彼は他四名に比べても、かなり意欲的なようでした」
エルジュがそう言うと、斜め前に座っていた女性職員が手を上げる。
「わたし覚えてますよ、その子。エルジュくん、質問攻めにされてたでしょ? 困ってておもしろ――大変そうだな、って」
初日の自己紹介の後、エルジュが先導して行われた研究所内の案内でのことだ。半笑いで「面白い」と言いかけた彼女をむっと睨むエルジュだが、あの場に居合わせたのは彼女だけではない。何人か同じように笑いを堪えている姿があった。
「そうか。意欲的なのは結構なことだね」
雰囲気につられるようにライシオンも、くすりと笑っている。だが、年嵩の研究員が真面目な口調で言葉を挟んだ。
「しかし……。そういうことならば、少し注意して見守った方が良いかもしれませんね」
少々警戒するような声音に、ライシオンも笑みを引っ込めて頷いた。
「そうだね。そういうタイプは大方が二種類に分けられる。『我々と志を同じくできる者』か、『興味本位で現場を引っかきまわす者』か……」
神妙に呟いたライシオンは、エルジュに視線を向けた。
「エルジュ、君はどう思う?」
静かな彼の眼差しに、エルジュは小さく首を横に振った。
「後者でなければいいと思いますが……、判断はまだ出来かねます」
それから胸の内で、エルジュはこう付け足した。
ただ、私は彼が少し――苦手だ。