初稿置き場
#夢見る少年と未羽化の蝶
#夢見る少年と未羽化の蝶_二章
10
研究所に戻ったレンとファルは、他の参加者の戻りを待ちながら、体験入所の日報を纏めていた。
「やばい、紙足りないんだけど」
「ぶふっ……」
次第に狭くなっていく自由記述欄にレンが呟くと、ファルが吹き出して肩を震わせる。
「わ、笑うなよぉ……」
「いいじゃないか。『以下、別紙』で続き書けば」
半笑いのままの提案に、「それしかないか」と考えつつ、手元は止まったままのファルの様子を窺う。
「……な、やっぱキツかった?」
主語のない問いに、ファルがこてと首を傾げた。だが、暫くして何についての問いなのか理解したらしく、一転して呆れ顔を浮かべた。
「そういうんじゃない、って言っただろ」
「でも」
「本当に違うから。ただ――」
ファルは一度言葉を切ると、周囲を気にするように視線を巡らせて、レン以外誰もいないのを確認すると、声を潜めて続けた。
「『普通の繭』はあんなに綺麗なんだな、っていうのと――。あと、僕は『普通』じゃないからな……。本当に羽化できるのか、って」
「ファル……」
レンは何と返してよいか分からず、思わず黙ってしまう。
彼が見てきたのであろう「普通ではない繭」とは、一体どんなものだったのだろうか。そして、それらを間近で見ていざるを得なかった幼少期のファルはどれほど――。
軽々しく慰めを口にすることもできずにいると、俄に部屋の外が騒がしくなった。
「みんな戻ってきたみたいだな」
「……だな」
何事もなかったかのように言うファルに、レンはぎこちない笑みを返す。
これ以上の話をここでするわけにはいかない。
日報に目を落としたファルに倣うように、レンも手元を見る。
だが、集中などできるはずもなく、ペンを持つ手は一向に動いてくれなかった。
2026/02/01 14:51:46
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「わ、笑うなよぉ……」
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「……な、やっぱキツかった?」
主語のない問いに、ファルがこてと首を傾げた。だが、暫くして何についての問いなのか理解したらしく、一転して呆れ顔を浮かべた。
「そういうんじゃない、って言っただろ」
「でも」
「本当に違うから。ただ――」
ファルは一度言葉を切ると、周囲を気にするように視線を巡らせて、レン以外誰もいないのを確認すると、声を潜めて続けた。
「『普通の繭』はあんなに綺麗なんだな、っていうのと――。あと、僕は『普通』じゃないからな……。本当に羽化できるのか、って」
「ファル……」
レンは何と返してよいか分からず、思わず黙ってしまう。
彼が見てきたのであろう「普通ではない繭」とは、一体どんなものだったのだろうか。そして、それらを間近で見ていざるを得なかった幼少期のファルはどれほど――。
軽々しく慰めを口にすることもできずにいると、俄に部屋の外が騒がしくなった。
「みんな戻ってきたみたいだな」
「……だな」
何事もなかったかのように言うファルに、レンはぎこちない笑みを返す。
これ以上の話をここでするわけにはいかない。
日報に目を落としたファルに倣うように、レンも手元を見る。
だが、集中などできるはずもなく、ペンを持つ手は一向に動いてくれなかった。