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#夢見る少年と未羽化の蝶_二章 9
被験者宅での実習が終わり、レンたちは研究所への帰途についていた。
主にはエルジュの作業を見守っていただけではあるが、レンは上機嫌のままるんるんと歩く。
蛹化した蝶の民は非常に繊細ゆえに、外部から中の状況を知る方法も限られている。
主には繭の表面を微量に採取して、薬品と反応させることで、羽化までの期間が順調か判別している。
今回エルジュに見せてもらったものもそれで、繭の破片を入れた蒸留水に、試薬を入れると鮮やかな菫色に変わったのには感動した。
基本的には蛹期の初期は青、羽化直前には赤へと変わるらしい。
今回現れた菫色は、この時期としては一般的な色であり、順調に羽化への道のりを辿っているという証だ。
「――けど、ほんと不思議だよなぁ。繭表面から、中の状況が分かるなんて」
レンはファルと並んで歩きながら、半ば独り言のように呟いた。
それに反応したのは意外にもエルジュで、半歩前を歩いていた彼は、ちらと振り返って口を開く。
「そうでもないですよ。あの繭自体も、蝶の民が生み出したものですから。繭を含めた全てが、一つの生命と考えることもできます」
「なるほど……。でも繭って、羽化後は肉体に再度取り込まれませんよね?」
羽化後に不要となるものが「生命の一部」なのか、と疑問を返すと、エルジュは難しい顔をしながらも頷いた。
「もちろん考え方はそれぞれですし、諸説あります。ですが、人体でも同じことは言えますよ」
彼はレンの頭を指差した。
「例えば髪。生え変わり、抜け落ちた後の人毛を『生命』とは思えずとも、肉体の一部となっている今はどうですか?」
「…………。たしかに!!」
新たな知見にハッとして声を上げる。エルジュが微笑ましいものを見るような目で、ほんの少しだけ目を細めた。
「ファル、貴方はどうでしたか。口数が少なかったように思いますが」
問われたファルは、どこかぼんやりとした様子で顔を上げた。その姿に、レンも今更ながら心配になる。
目の前のことに集中しすぎて、ファルの存在がすっかり意識の外に追いやられていたことを反省しながら、彼の顔を覗き込んだ。
「なんかごめん、俺ばっか楽しんじゃって」
「……いや、そういうんじゃなくて」
ファルは言葉に迷うように、二度、三度と口を開け閉めしたあと、続きを呟いた。
「僕はまだ……、二十三にもなって蛹になる気配もないから、その……、今日の彼のように…本当になれるのか、と……」
ファルの言う通り、二十歳を超えていまだに蛹化の兆しがないのは、かなり遅い部類だ。
だがエルジュは事も無げに肩を竦めた。
「確かに平均よりは遅い、と言わざるを得ませんが。それでも個人差があります。三十代になって羽化した例もありますからね。気にしすぎないことです」
「…………はい」
ファルは、慰めの言葉に薄く笑みを浮かべた。
だがそこに、拭いきれない不安を見て、レンは落ち着かない気持ちになっていた。