初稿置き場
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ
18
「――それでは、お大事に」
エルネストの病室に当てた部屋の扉が開き、聞こえたユリスの声にルベルトは顔を上げた。
「ユリス、フィロー殿の様子は……」
「で、殿下……」
ビクッと身体を震わせて、一瞬怯えたような表情を見せたユリスに、ルベルトは首を傾げる。
「どうしたんだ、ユリス?」
「……いえ、いらっしゃると思わず」
扉をゆっくりと後ろ手に締めたユリスは、ルベルトの質問を思い出してか、ちらりと背後に視線を投げる。
「少し、情緒不安定のようですが……。突然のことですから仕方ないでしょう。ひとまず、ベータ男性のアストルに任せることにしましたし、我々にこれ以上できることはないかと」
「そうだな……」
予期せぬ妊娠。その上、番だという元婚約者は牢の中。自分自身は慣れぬ異国の地となれば、平静でいる方が難しいだろう。
「それよりも、この騒動を収める方法を考える方が専決では?」
「たしかになぁ。ジジイ共が、『妊娠中にもかかわらず王太子妃に名乗りをあげるなんて、これだからオメガは』って、騒ぎ出してる」
「本人も自覚がなかったのですし、仕方ないでしょう」
「聞く耳ないよ、あいつらは……」
ルベルトは、はぁと大きな溜息をついて、ちらりとユリスを見る。
(どうにかユリスを説得して、オメガであることを公表した後、伴侶に選ぶつもりだったんだけどな……)
仮に説得できたところで、今は時期が悪すぎる。
だが、なんとしても次の発情期の時期までにはこの問題を片付けたい。
そう何度も同じ手口でユリスと過ごすことは難しいし――、それこそエルネストのように妊娠している可能性もある。
「――まぁ、なんにせよあれだな。妃選びはまた振り出しだな」
「嬉しそうですね……」
「そりゃそうだよ」
ルベルトはユリスの耳元に顔を寄せる。
「私の妃に相応しいのは、お前だ」
「っ……」
ユリスがルベルトから一歩離れる。
「ユリ……」
その泣きそうな表情を見て、自分が何かとてもまずいことを言ったのを悟る。
だが、ユリスは何も言わずに顔を背けた。
「……俺は、」
ユリスはふると首を振って言葉を切ると、スッと表情を引き締めて、ルベルトを見た。
「馬鹿なことを言ってないで行きますよ。やることは山積みなんですから」
「あ、ああ」
足早に歩きはじめたユリスの後を追う。
この時のユリスが何を思っていたのかは分からぬまま――。
この日から二週間程が経ったある日、ユリスはルベルトの前から姿を消したのだった。
2026/02/01 14:42:52
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「――それでは、お大事に」
エルネストの病室に当てた部屋の扉が開き、聞こえたユリスの声にルベルトは顔を上げた。
「ユリス、フィロー殿の様子は……」
「で、殿下……」
ビクッと身体を震わせて、一瞬怯えたような表情を見せたユリスに、ルベルトは首を傾げる。
「どうしたんだ、ユリス?」
「……いえ、いらっしゃると思わず」
扉をゆっくりと後ろ手に締めたユリスは、ルベルトの質問を思い出してか、ちらりと背後に視線を投げる。
「少し、情緒不安定のようですが……。突然のことですから仕方ないでしょう。ひとまず、ベータ男性のアストルに任せることにしましたし、我々にこれ以上できることはないかと」
「そうだな……」
予期せぬ妊娠。その上、番だという元婚約者は牢の中。自分自身は慣れぬ異国の地となれば、平静でいる方が難しいだろう。
「それよりも、この騒動を収める方法を考える方が専決では?」
「たしかになぁ。ジジイ共が、『妊娠中にもかかわらず王太子妃に名乗りをあげるなんて、これだからオメガは』って、騒ぎ出してる」
「本人も自覚がなかったのですし、仕方ないでしょう」
「聞く耳ないよ、あいつらは……」
ルベルトは、はぁと大きな溜息をついて、ちらりとユリスを見る。
(どうにかユリスを説得して、オメガであることを公表した後、伴侶に選ぶつもりだったんだけどな……)
仮に説得できたところで、今は時期が悪すぎる。
だが、なんとしても次の発情期の時期までにはこの問題を片付けたい。
そう何度も同じ手口でユリスと過ごすことは難しいし――、それこそエルネストのように妊娠している可能性もある。
「――まぁ、なんにせよあれだな。妃選びはまた振り出しだな」
「嬉しそうですね……」
「そりゃそうだよ」
ルベルトはユリスの耳元に顔を寄せる。
「私の妃に相応しいのは、お前だ」
「っ……」
ユリスがルベルトから一歩離れる。
「ユリ……」
その泣きそうな表情を見て、自分が何かとてもまずいことを言ったのを悟る。
だが、ユリスは何も言わずに顔を背けた。
「……俺は、」
ユリスはふると首を振って言葉を切ると、スッと表情を引き締めて、ルベルトを見た。
「馬鹿なことを言ってないで行きますよ。やることは山積みなんですから」
「あ、ああ」
足早に歩きはじめたユリスの後を追う。
この時のユリスが何を思っていたのかは分からぬまま――。
この日から二週間程が経ったある日、ユリスはルベルトの前から姿を消したのだった。