初稿置き場
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ
17
「お加減はいかがですか」
「…………おかげさまで」
エルネストの元へ見舞いに訪れたユリスは、明らかに消沈した様子の彼に肩を竦めた。
エルネストは、案の定妊娠していた。
相手は、言うまでもなく婚約者だったアルファだ。項に噛み跡まであり、そういえば彼はいつも首の詰まった服を着ていたと思い出す。オメガが首元を隠すのはよくあることなので、気にも止めていなかったが。
ベッドの上に座り黙ったままのエルネストに、ユリスはとりあえず伝えるべき内容を口にする。
「そちらの国の方へ報告は入れています……が、妊娠初期の長距離移動は避けるべきですからね。暫くはこちらに滞在することとなるかと」
それでいいか、という意味で聞いたのだが、エルネストは自嘲するように嗤った。
「どうだか。この子がもし生まれれば、ややこしいことになる。それならいっそ、と流れることを期待して呼び戻されるかも」
投げやりな言葉にユリスは思わず眉をひそめた。
「それを許す鬼畜は、この国にはいません」
「……何故?」
「何故、って……」
「僕は他国の人間だ。それも、妊娠している可能性を黙って、この国の王太子に取り入ろうとしたような奴だぞ? 番にさせられて、避妊薬も飲ませてもらえなかった。その結果どうなるかなんて……、あんたなら分かるだろ」
「……そうですね。
普
(
・
)
通
(
・
)
なら――」
普通なら、かなりの高確率で妊娠する。
「無理やり、だったんですか?」
エルネストはその問いに、虚を突かれたように押し黙った。そして、ぽつぽつと零すように言う。
「……『無理やり』……だったよ。でも…嬉しかった。あんなどうしようもないクズでも、僕は……彼を、愛していたから」
エルネストは玉を結んだ涙が零れ落ちる前に、それを袖で拭った。
それを黙って見つめながら、ユリスは自分とどこか似ているな、と思った。
愛しい人に触れられる喜びは、抗いがたいものだ。頭ではいけないと、駄目だと思っていても、彼が求めてくれるのならと受け入れてしまう。それが発情期なら、なおさらだ。
だが、同時にどうしようもないほど、羨望を感じる。
「――俺は、貴方が羨ましい」
思わず気持ちが口から零れ落ちると、エルネストはハッとしたように顔を上げた。
「愛する人の子供を産める、貴方が」
ユリスがそれを叶えるには、待たなければならない奇跡があまりにも多すぎるから。
2026/02/01 14:41:57
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エルネストは、案の定妊娠していた。
相手は、言うまでもなく婚約者だったアルファだ。項に噛み跡まであり、そういえば彼はいつも首の詰まった服を着ていたと思い出す。オメガが首元を隠すのはよくあることなので、気にも止めていなかったが。
ベッドの上に座り黙ったままのエルネストに、ユリスはとりあえず伝えるべき内容を口にする。
「そちらの国の方へ報告は入れています……が、妊娠初期の長距離移動は避けるべきですからね。暫くはこちらに滞在することとなるかと」
それでいいか、という意味で聞いたのだが、エルネストは自嘲するように嗤った。
「どうだか。この子がもし生まれれば、ややこしいことになる。それならいっそ、と流れることを期待して呼び戻されるかも」
投げやりな言葉にユリスは思わず眉をひそめた。
「それを許す鬼畜は、この国にはいません」
「……何故?」
「何故、って……」
「僕は他国の人間だ。それも、妊娠している可能性を黙って、この国の王太子に取り入ろうとしたような奴だぞ? 番にさせられて、避妊薬も飲ませてもらえなかった。その結果どうなるかなんて……、あんたなら分かるだろ」
「……そうですね。普通なら――」
普通なら、かなりの高確率で妊娠する。
「無理やり、だったんですか?」
エルネストはその問いに、虚を突かれたように押し黙った。そして、ぽつぽつと零すように言う。
「……『無理やり』……だったよ。でも…嬉しかった。あんなどうしようもないクズでも、僕は……彼を、愛していたから」
エルネストは玉を結んだ涙が零れ落ちる前に、それを袖で拭った。
それを黙って見つめながら、ユリスは自分とどこか似ているな、と思った。
愛しい人に触れられる喜びは、抗いがたいものだ。頭ではいけないと、駄目だと思っていても、彼が求めてくれるのならと受け入れてしまう。それが発情期なら、なおさらだ。
だが、同時にどうしようもないほど、羨望を感じる。
「――俺は、貴方が羨ましい」
思わず気持ちが口から零れ落ちると、エルネストはハッとしたように顔を上げた。
「愛する人の子供を産める、貴方が」
ユリスがそれを叶えるには、待たなければならない奇跡があまりにも多すぎるから。