初稿置き場

#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 19


「宰相!! どういうつもりだ!」
 突然部屋に押し入ったルベルトに、宰相――ユリスの父ダリアス・ローエンベルクは、露骨に眉をひそめた。
「何事ですか、王太子殿下」
 含みを持たせた問いかけに、「王太子らしからぬ振る舞いだ」という非難を感じる。
 だが今は、それに構っている余裕などない。
「とぼけるな、ユリスのことだ」
 昨日まで普段となんら変わらない様子だった。だが、今朝になってみれば、待てど暮らせどユリスは出仕してこない。
 焦れてたまたま部屋にやってきたアストルを問い詰めれば――
『ユリス様は昨日をもって、ご退職されました。殿下へのご報告は……、訊ねられるまで黙っているように、とのご指示でした』
 と、この通りだ。
 急に何故、と混乱の中調べてみれば、業務上の引き継ぎなどは完璧で、ユリスだけが煙のようにきえてしまったかのような錯覚を覚えた。
 とはいえ、本来なら王太子である自分の許可もなく辞めるなどできるはずもない。
 それを可能にするには――、目の前のこの男の協力なくしてはあり得ない。
 ダリアスは溜息をつくと、人払いをした。
「何か問題がありましたか」
「問題、だと……?」
「ええ、そうです。執務の滞りなどは起きていないはずですが」
「っ――」
 ルベルトは答えに窮した。
 事実、「業務上の」問題はなかったからだ。
「そっ、それでも、ユリスが私に一言もなくいなくなるなど……」
「今の状況は、あれの選択です、殿下。貴方の元にいることを、あれは拒んだ。それだけの話でしょう」
 傍にいることを拒んだ、という言葉がルベルトの肩に重く伸し掛かる。
 何も言えなくなってしまったルベルトを一瞥し、ダリアスはもう話は終わりだというように、仕事に戻りながら言った。
「――貴方はまだ若い。『番』をこの世の全てのように思えてしまっても仕方がない、が……。フェロモンの結び付きに踊らされ、一生を棒に振るのは愚かな行為です。契約も、少し離れていれば消えてしまう程度のものなのですから」
 それだけ言うと、彼は口を閉じ、もうルベルトの方を見ることはなかった。

2026/02/01 14:43:38

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