初稿置き場
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ツンデレ王子様の結婚事情:漫画(字コンテ)・BL
玉座の憧憬 アレイスト×セレンIF:小説・男女恋愛・バッドエンド・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 アレイスト×セレンIF:小説・男女恋愛・バッドエンド・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
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#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 16
予期せぬ来訪者はあったものの、ユリスがすべきことは変わらない。
と、思っていた。
「はじめまして、ユリス・ローエンベルク殿、ですよね?」
「え、と……」
ユリスは件の子息エルネストに、待ち伏せされて捕まってしまったのだった。
場所を移し、ルベルトに許可をもらったユリスは、落ち着いた態度で茶を飲むエルネストの対面に座っていた。
「それで、人払いしてまで私にお話とは?」
「分かっておられるのでは?」
にっこりと微笑まれるが、ユリスには皆目見当がつかない。
なにせ、ユリスとエルネストは今日が初対面だ。もちろん、ルベルトの最側近であるユリスの存在自体は、彼が知っていても不思議はないが――。
「何を仰ってるのか」
ユリスの返答に肩を竦めたエルネストは、カップを置いて目を眇めた。
「この国で王太子の補佐官というのは、愛人を兼任するものなのでしょうか?」
「は?」
「隠さなくても結構ですよ。以前、執務室で口付けをなさってましたよね。窓から見えました」
「なっ……」
この前のキスが見られていたのか、と動揺しそうになるが、どうにか気持ちを落ち着けると、努めて冷静に返した。
「それは殿下への侮辱と受け取っても? あの方が愛人を補佐官に任命するような、公私も分けられぬ下劣な人間だと」
「まさか! そのような意図はありませんよ。ただ、不思議だなと思いまして」
「……不思議?」
「ええ。だってそうでしょう。貴方なら、なれるでしょう? 愛人ではなく、『妃』に」
今度こそ、ユリスは固まってしまった。エルネストの発言は、確信を持っているような口振りだった。
いや、でもまだ、何を言われたわけでもない。
ユリスはふぅ、とこれみよがしに溜息をついた。
「王太子殿下が妃にお選びになるのは『異性」です。お世継ぎをお産みになれることが最低条件なのは、貴方もご存知でしょう」
「ええ、もちろん。だから言ったではないですか。『不思議だ』と。貴方はその『異性』に当てはまっているのに」
「……私が女に見えますか?」
もう、エルネストが何を言いたいのかは分かっていたが、苦し紛れに問い返す。案の定、彼はぷはっと吹き出した。
「まさか。でも、分かりますよ。むしろ、周囲が何故気付かないのかのほうが疑問です」
それは、ユリスがルベルトと番になった後に会ったからかもしれない、とは思った。
だが今はそんなことを言っている場合ではない。もう言い逃れが出来そうもない以上、どう口止めをするかだ。
「……フィロー殿の考えていらっしゃる通りだとして。とれをどうするおつもりで?」
「別にどうも。ただ私が知りたいのは、貴方が敵になるのか否か、だけです。貴方が王太子妃候補に名乗りを上げた場合、一番強力なライバルになりそうですし」
ユリスはエルネストをじっと観察して思う。
(……私が既に殿下の番であることは気付いていないのか?)
なら、やりようはあるとユリスは嘆息した。
「そういうことでしたら、ご心配には及ばないかと。私は『アルファの男』です。これまでも、これからも」
「…………そうですか」
オメガであることを公表する気はない。つまり、ルベルトの妻になることを望むこともない。
そういう意図を含ませた言葉を、エルネストは正確に読み取ってくれたらしい。
彼はにっこり笑って、ティーカップを摘んだ。
「どうやら、私の勘違いだったようで。安心しました」
彼も多少は緊張していたのだろうか。肩の力が抜けたように思える。
だが、カップを口元まで持っていった時、異変が起こった。
「っ、う゛……」
エルネストの手からカップが滑り落ち、大きな音を立てて割れる。
「フィロー殿!?」
彼は口元を抑え、青い顔をしていた。
「一体、どう――」
立ち上がったユリスはエルネストの傍まで回り込んで、はっと息を飲んだ。
単なる勘、としか言いようがない。
ユリスは周囲を見渡して、自身の副官の名を呼んだ。
「アストル!」
慌ててこちらへ駆け寄ってくる彼に、小声で指示をする。
「医者の手配……は、私がするから、彼をなるべく揺らさないように運んでやってくれ」
「は、はい。しかし……」
華奢なオメガとはいえ、エルネストは成人した男だ。運ぶだけなら衛兵など他に適任がいるだろう、という顔だ。
だが、ユリスは首を横に振った。
そして、一層蒼白な顔になっているエルネストを一瞥して、彼自身も同じ結論に至ったことを悟った。
「今は騒ぎにしたくないんだ。彼は、…………妊娠しているかもしれない」