初稿置き場

#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
#愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ 9


 ルベルトと番になってから、一週間余り。
 ユリスの身の回りは、奇妙なほど落ち着いていた。
「――ほら。この間、殿下が薬を……」
「おいたわしいこと……」
 もちろん、王太子が発情誘発剤をかけられたことは大問題になっており、ユリスにも彼を憐れむ人々の声が届いている。
 だが、そんな噂話に興じる彼らも……、
「あら、ローエンベルク卿」
 声をかけられたユリスは、足を止めて振り返った。たしか彼女は、ルベルトの婚約者候補の母だったはず、と思い返しながら笑みを浮かべる。
「お久し振りでございます、夫人」
 いかがなさいましたか、と視線で問うと、彼女は頬に手を当てて、小首を傾げた。
「いえね。殿下のご状況が分からない、と娘が酷く心配しているものだから。殿下はご息災でいらっしゃるのかしら?」
「ええ。お身体の方はご健康そのものです。ただ、今回の事件は婚約者候補様との面通りの前に起きましたので……。次はご令嬢方に危害が加えられるのでは、とご心配なさっておいでなのです」
 だから、面会が叶わないのだと伝えると、彼女は痛く感激した様子で、うんうんと何度も頷いた。
「まぁ、そうでしたのね……。そういうことなら。ローエンベルク卿も、くれぐれも殿下をよくお支え下さいましね」
 それでは、と去っていく女を、ユリスは一礼して見送った後、再び歩き出す。
 ――このように、ユリスがオメガであることも、ルベルトの番になってしまったことも、周囲には知られぬまま、日々が過ぎている。
 ルベルトも……言っては何だが不気味に沈黙したままで、本当に何事もなかったかのようだった。
(とはいえ。そろそろ、だろうな……)
 ルベルトとも短くない付き合いだ。彼がそろそろ何かしらの行動を仕掛けてくる頃合いだと、ユリスは推測していた。
 その上、「そろそろ」と言うならば、もう一つ。
(後……、一ヶ月もしない内に、発情期が来る。どうやったら殿下を躱せるだろう……)
 ぐるぐると思考を巡らせている内に、ユリスはルベルトの執務室へと辿り着いた。
「失礼いたしま――」
「ユリス、来たか!」
 挨拶も言い終わらない内に、ルベルトの声が響いて、ユリスは目を丸くする。
 部屋に入ると、彼は満面の笑みを浮かべながら、つかつかとこちらに歩いてきて、こう言った。
「旅行に行こう、ユリス!」
「……はあ?」

2026/02/01 14:30:03

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