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#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 10
顔に当たる風が冷たい。
ロウェルの腕に抱き上げられたまま見る夜の景色は、あっという間に通り過ぎていく。
アレイストは、彼の身体にしっかりと抱きつきながら目を閉じる。
八年前のあの日――、いや、もっと以前から、本当はこうしてほしかったのかもしれない。
置いていかないで。傍にいて。独りはさみしい。
素直に口にすることのできなかった言葉たちも、ようやく報われるのだろうか。
ロウェルはいつも優しく、大人だった。
それは、ずっと変わらない。
崖から滑落し――、今思えば彼も自分と変わらぬほど動揺していたのだと思う。
薄れる意識の中でロウェルの姿が遥か上方に見えて、すぐにいなくなった。
置いていかれたのだと思った時の絶望は、今も心にこびりついている。
たとえそれが、後で冷静になった時、単に大人を呼びに行ったのだと理解したとしても。
『申し訳ありませんでした』
気安い仲だと思っていた年長の少年から、そのような謝罪を受け……、酷く悲しかったというのも、無関係ではないはずだ。
あの日からボタンをかけ違ったまま、今日まで来てしまった。
当時は二人とも幼かったのだと、真に理解できたのは、近い年頃となった二人の息子を見たせいだ。
幼かった。そして精神が幼いまま、ロウェルに甘えた。
いつかまた、自分は「置いていかれる」のではないかと怖くて試した。
彼が何もかも受け入れてくれることに安心して、同時にこんな姿が見たかったわけじゃないと泣いて。それでも、世話を焼いて、隣にいてくれるから眠ることができた。
あの日、出ていけと、姿を見せるなと、そう言ったのは、彼から捨てられるのが怖かったからだ。
こちらを振り返ることなく去っていく背中に、本当は追い縋りたかった。
けれど、そうする資格がないことも分かっていたから、身体が動かなかった。
だって、彼はやっと「アレイスト」という重荷から解放されるんだから。
しかしそれと引き換えのように、あの夜以降、アレイストは満足に眠ることができなくなった――。
「……ロウェル」
「ん?」
ロウェルはとある建物の前で足を止めると、迷いなくその中に入っていく。
「どうして、来たんだ」
八年前、ロウェルを理不尽に突き放した後、もう彼に依存するのは止めようと決めたはずだった。
数年はそれで上手くいっていたのだ。妻アミリアのことは家族として愛していたし、息子たちも可愛かった。けれど、優しく温厚な人物像を演じ続け、自分自身でも元からそんな人間だったかのような錯覚を覚えはじめた頃には、心が疲弊しきっていたのだろう。
どこか自分がおかしくなっているのは気付いていたが、足を止めるわけにはいかなかったから。
そうして、身体が限界を迎えた。
会議の途中、立ち上がった瞬間に突然意識が遠のいて、気が付くと床の上だった。その後、アミリアに休むよう懇願され――、糸が切れてしまった。
心と身体に溜まった疲労をようやく自覚して、泥のように眠った。
そうして目が覚めた時、まるで八年前のあの日をやり直すかのように、ロウェルが窓から入ってきたのだ。
夢だと思った。
夢だと思っていたから、簡単に彼の言葉に頷いたのに。
アレイストを抱えたままのロウェルは、階段を上って、部屋の扉を開けた。そして、そのままベッドに腰掛けて息をつく。
「どうして来たのか、か……。どうしてだろうな」
ロウェルはアレイストの背中を撫でて、次の瞬間ぎゅっと強く抱き締める。
「ただ、一目……会いたかった」
「……なんで」
ロウェルの言葉が理解できない。
こんな我儘で面倒な相手、離れられて清々したのではないのか。いるだけで、彼の罪悪感につけ込むような存在など、いない方が。
ロウェルがアレイストの髪を梳く。本当は、このやわらかい手が、とても好きだった。
「前、言ったよな。俺の全てがお前のものだって」
アレイストは、ロウェルの肩に顔を押し付けて、服をぎゅっと握った。
もちろん覚えている。
自身の不注意で起こった出来事が、彼を縛り付けているのを象徴しているように聞こえて、嫌で堪らないのに、同時に安堵も覚える自分に心底失望した言葉だ。
だが、ロウェルの声には責めるような響きはなく、何故か少し照れたような声で続けた。
「だからさ、俺……お前がいなきゃ駄目だったんだよ。お前がいなきゃ、生きている意味を見出だせない」
アレイストは、驚きのあまり声も出せずに絶句した。
けれど、今度は「嫌」だったからではない。むしろ――
「――えっと、とりあえず今日はもう寝ろよ。これからのことはまた明日考えればいい」
アレイストの沈黙をどう受け取ったのか、ロウェルは早口でそう言うと、アレイストの身体をサッと抱き上げて、ベッドに寝かせた。
そして、距離を取ろうとする――が、アレイストは彼の服を掴んで引っ張った。
「お、おい、アレイスト……?」
「……ロウェル」
腕を掴み、肩を引き寄せる。戸惑った様子のロウェルを横目に見ながら、アレイストは彼の唇に自分のものを押し当てた。
「っ!?」
ロウェルが息を飲む。
だがアレイストはそれに構わず、彼の唇を食んで、舌でなぞった。
「ア、アレイスト……」
生唾を飲み込むロウェルの喉に移動して、首筋を強く吸った。
何故、こんなことをしているのかなど、自分でも分からない。ただ、浮かんでくる感情のままに言った。
「お前は私のものなんだろ?」
「あ、ああ……」
「なら、僕も……お前のものになりたい」
骨の髄まで、余す所なく、全てロウェルのものに。