初稿置き場
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玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
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#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 9
その道程は、八年前と驚くほど同じだった。
城内へ忍び込み、アレイストの部屋の窓辺に辿り着く。
療養のためか、彼は夫婦の寝室ではなく、私室――彼と身体を重ね、そして決別したあの部屋にアレイストはいた。
音を立てぬように窓を開けて、身体を滑り込ませる。
こんな深夜だ。アレイストは眠っているだろう。気配を消して忍び込んだロウェルに気付くはずもない。
だから、顔だけ見て、生きていることに安心して、そして立ち去るつもりだったのだ。
しかし――、
「…………ロウェル……?」
記憶にあるより随分弱々しい声が聞こえた。
驚いて目を見開くと、そこにはベッドから身体を起こしたアレイストがいた。
細く、なった。
八年の歳月が流れ、相応に歳をとっているが、それ以上に痩せた身体が目立つ。
一目で病気だと思うほどでは、まだなかったが、それでもロウェルに衝撃を与えるには十分だった。
だが、ロウェルの驚きはそれだけで終わらなかった。
ロウェルと目が合ったアレイストは、唐突にその目に涙を浮かべて、ボロボロと泣き出したのだ。
「っ!?」
「お…そい……!」
しゃくり上げながら、いつかと同じ言葉をアレイストは叫んだ。
その言葉に押されるように、ロウェルは足を踏み出す。
「……ごめん」
八年前とまったく同じ言葉を返しながら、ロウェルは――今度は、アレイストを両腕で強く抱き締めた。
本当は、ずっとこうしたかったのだと気付く。
アレイストはひっくひっくと泣きながら、ロウェルの背中をぎゅっと掴む。肩口に顔を押し付け、そこを涙でべしょべしょに濡らしながらも、また叫んだ。
「っ――、ほん、とにおそい! ばか!! どこ、行ってたんだよっ!!」
「ああ、本当にそうだ。ごめんな、独りにして……」
「ゆるさない……、ぜったい…………」
ぐすぐす泣きながらも、アレイストはロウェルの身体から離れようとしない。むしろ、ロウェルの服を掴む手に、更に力を込めたくらいだ。
ロウェルは震えるほどの力でその手を離すまいとするアレイストの背を撫でる。
八年前のあの日、もしあそこで振り返っていれば、これほど泣かせることはなかったのだろうか。
「な、アレイスト」
返答の代わりに、ロウェルに回された腕の力が強くなる。それを感じて、まだ少し感じていた迷いが消えてしまった。
「……俺と来るか?」
そっと囁くように問うと、アレイストの身体がビクリと震えた。
彼は断るかもしれない。それでも良かった。
アレイストがどういう返事をしたとしても、もう今度こそ離れないと決めたからだ。
アレイストは、すんと鼻を啜ってから、言った。
「もう、僕を……置いていかないと、誓うなら」
顔は伏せられたまま、どんな表情をしているのかロウェルからは窺い知れない。だがその声には、怯えが潜んでいるような気がした。
「……誓うよ」
そっと返して、ロウェルはアレイストの身体を抱き上げた。八年前よりも軽くなったその身体は、あの時よりも強い力でロウェルの首にしがみついた。
その時、部屋の扉がそっと開いて、ロウェルはその先にいるアミリアと目が合った。
おそらく、アレイストの様子を見に来たのだろう。騒いだ声で、魘されていると思ったのかもしれない。
お互い、驚きで息を飲んだと思う。だが、アミリアは顔を上げようともせず、ただロウェルにしがみつくアレイストの姿を見て、悲鳴を飲み込んだようだった。
ロウェルは何も言わないまま、彼女に背を向けて窓から部屋を飛び出した。
遠ざかる窓辺で、アミリアが深く頭を下げていたような気がしたが、それが真実だったのかは定かではない。