初稿置き場
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玉座の憧憬 本編:小説・男女恋愛
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ツンデレ王子様の結婚事情:漫画(字コンテ)・BL
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玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
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玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
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#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 6
ロウェルの予想通り、アレイストの縁談はトントン拍子に進んだ。
アミリアの調査が終了した後、一ヶ月も経たないうちに婚約式が行われ、その半年後に婚礼が行われることも決まった。
今年十八歳となるアミリアは、貴族令嬢としてはそろそろ嫁き遅れの心配をされる年齢だ。そのことも考慮されてか、王族の結婚としては異例なほど様々なことが急速に進んでいる。
慌ただしく日々が過ぎる中で、アレイストとロウェルの関係だけが変わらない。
いつ、これで終わりだと言われるのか、毎夜覚悟をして行くのに、何もないまま時間だけが過ぎていた。
そうして、とうとう――婚礼を明日に控える夜となっていた。
いつものように窓から部屋へと身体を滑り込ませる。
アレイストが背を向けて横たわるベッドへ静かに腰掛けると、彼の手がロウェルのシャツを掴んだ。
「…………遅い」
「ごめん」
そのまま、二人とも動こうとする気配すらない。
いつもならアレイストが億劫そうに起き上がって、ロウェルは命じられる前に服を脱ぐ。
だが、今夜はただじっとして、互いの呼吸音だけがする。
俺は、この関係を終わらせたくないのだろうか――。
彼に妻が出来た後まで、二人の関係が秘密のままでいられるはずもない。
明日以降、アレイストはアミリアと床を共にする。彼が本心でどう感じているのかにかかわらず、それは決定事項だ。
ならば今夜、アレイストは選ばなければならない。
ロウェルと以前の関係に戻るのか、男の愛人がいることを公表するのか、それとも――
「アレイスト」
名を呼んでも、彼は顔を上げようとはしなかった。
「アミリア嬢はできた令嬢だな」
アレイストは顔だけ少しこちらに向けて、ロウェルを睨んだ。
お前に言われるまでもない、という顔だ。
ロウェルは苦笑してアレイストの髪を撫でる。いつもはすぐさま払い除けられる手は、何故か今日はそのままだ。
「妻となる女性を大事にすべきだ。お前も分かってるだろ」
「――ッ、」
アレイストが息を飲んで、急に身体を起こした。
頭に乗せていた手は、いつもよりきつく叩き落されて、爪が掠ったのか手の甲に赤い筋ができた。
ようやくロウェルを真正面から見たアレイストの目つきは鋭かった。
「説教はたくさんだ。何が言いたい」
「……夜、こうして会うのはやめよう」
きっと、彼もロウェルが何を言いたいのかなど分かっていたはずだ。それでも、はっきりと言葉に乗せる。
「そうやってまた、私から離れようとするのか」
暗い、憎しみさえ混じっているのでは思えるほど、絞り出すように落とされた声に、ロウェルもたじろいでしまう。
だが、これからのアレイストのためにも、この一線は引かねばならない。
「アレイスト、お前は王太子――未来の王だ。瑕疵のない王妃との円満な関係と、男の愛人を囲っているという醜聞……。どちらを取るかなんて、分かりきってるだろ?」
ロウェルは当たり前のことを、ただ口にしただけのつもりだった。
しかし、それを告げた次の瞬間、ほんの一瞬――見間違いかと思えるほど一瞬だけ、アレイストは酷く傷付いた顔をした。
「アレ――」
「ああ、そうだな」
自分が何かとても酷いことを言った気がして、かけようとした声を、俯いたアレイストが打ち消すように呟いた。
そして、突然、床に突き飛ばされ、更に枕を投げつけられる。
「な、にす……」
座った状態から押し出されただけで、当たった枕もやわらかい。怪我や痛みはないが、あまりに突然のことすぎて、心が追いつかない。
反射的に言い返そうとしてロウェルは振り返ったが、そこにいるアレイストの表情を見て、言葉が途切れた。
歯を食いしばり、怒りを抑えようとしてか肩で息をしていた。だがなによりも、その目が――今にも泣きそうで。
「お前はいつも正しい! いつも! でも、私は……っ」
アレイストはそこで言葉を詰まらせ、また枕を投げつけてきた。
そして、叫ぶ。
「もういい! お前なんていらない!! どこへでも行ってしまえっ!!」
「アレイスト……」
「出てけよ! もう、私の前に姿を見せるな!!」
「――っ、……」
ロウェルは口を閉じると、立ち上がって彼に背を向けた。
外へ出ると窓を閉める。
振り返りたい気持ちをどうにか堪えて、そのままその場を立ち去った。
それ以来、ロウェルはアレイストと顔を合わせることはなくなった。
彼の「でも、私は」の続きは何だったのだろう。
それだけが、心の片隅にひっかかり続けたまま。