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#玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF 2
ロウェルとアレイストは、いわば「幼馴染」だった。
とはいっても、隣国の王と彼に正妃として嫁いだ公女との間に生まれた王子であるアレイストとは、身分の差というものは存在していた。
ロウェルが赤ん坊のアレイストに引き合わされた時も、「将来仕えるべき主君」だと説明されていた。
だが、当時ロムーリャ公国にいたロウェルが何故、そんな王子と出会えたのかというと、少々特殊な事情によるものだ。
アレイストの父には側妃が存在した。公国で蝶よ花よと育てられた公女リーティエは、国王からの寵が得られない現実に耐えられず、子を妊娠すると同時に宿下がりを名目に公国へと戻ってきた。
その後アレイストが生まれたあとも、リーティエが王国へ戻ることはなく、またあちらも寵妃とその間に生まれた娘にしか興味がないのか、放置されることとなった。
このままその娘が王位を継ぎ、アレイストは公国で生きるのだろうか。
そう思われていたが、変化があったのは、アレイストが九歳、ロウェルが十二歳の時だ。
寵妃シエラがこの世を去った。
その報が公国へともたらされると同時に、アレイストの召喚命令まで下されたのだ。
アレイストは――、母がこのまま公国で過ごせることを条件に、それを飲んだ。そうして、アレイストは会ったこともなかった父王の庇護の元、立太子されたのだった。
当然のように、ロウェルはアレイストと共に王国へ向かった。
しかし、彼の正式な臣下に加えられることはなく、ロウェルは微妙な立場に置かれ続けた。だが、ある意味では都合が良かったとも言える。身分の保証された人間では立ち回れないような、際どい仕事もこなすことができたからだ。
ロウェルは、アレイストの命令は何でも聞いた。
そうすることでしか、彼に贖えなかったからだ。十七年前のあの日、ロウェルの軽率さの代償を支払ったのはアレイストだった。命にこそ別状はなかったものの、左足の膝から下の自由を、彼は失った。
杖をつき歩く姿を見るたび、ロウェルは自身の罪を呪った。
その日から、ロウェルはアレイストへの贖罪に人生を捧げている。
その日も、呼び出されて向かったのは、アレイストの私室だった。
あまり大っぴらにできないような命令を下す時、彼はいつもそうするため、特に何の疑問もなく、そこへ向かう。
衛兵に見つからぬように窓から部屋に侵入すると、珍しくアレイストはその部屋にあるベッドに腰掛けてこちらを見ていた。いつもならば、その隣の部屋にあるソファに座っているのに。
余程内密な話なのだろうか、と少し緊張した。
「よう、今日はどうしたんだ?」
だが、内心で感じている緊張感は欠片も出さずに、至って普段通り声をかける。アレイストは不機嫌そうな顔を更に歪める。
品行方正で優しい王太子殿下、として通っているアレイストだが、ロウェルに対してはこの十七年間一度たりとも笑顔を見せたことがない。いつも険しい顔ばかりだ。
「アキュイラの件、聞いてるか」
冷たい声にもすっかり慣れっこで、もう寂しいとも思わなくなって久しい。
ロウェルは頭の中にある情報を引っ張り出しながら、軽い調子で答える。
「ああ、セレンティーネ殿下が領主に任命されたらしいな。それがどうした?」
「姉上を籠絡しろ」
「…………はい?」
意味が分からず首を傾げる。「籠絡」、もしや自分の知っている「ろうらく」ではないのかもしれない、と願望混じりに思うが、アレイストは苛立たしげに続けた。
「二度も言わせるな。姉上をお前の言いなりになるようにしろ」
「……えっと」
どうやら、知っている「籠絡」で合っていたらしいと悟る。が、意図がまるで分からない。
「何故……?」
「姉上に反逆を起こさせる」
「は!?」
穏やかではない言葉が飛び出して、目を剥く。
その後、アレイストが語ったあらましはこうだ。
セレンティーネは、今回の決定に不服を感じている。まあ、これは当然とも言える。そもそもアレイストの立太子に伴い、廃太子されたこと自体納得していないようなので、ますます玉座から遠ざかってしまうからだ。
アレイストは、いずれセレンティーネが王位を取り戻すべく、動くと考えている。それならば、手勢が揃わぬうちに、こちらに都合の良い時に、反乱を起こさせて処理すればよいと考えたようだった。
「…………なるほどな」
一応、筋は通っている。
ロウェルはセレンティーネの懐に潜り込み、彼女を誘導。出来うる限り少数で王位簒奪を目論ませる、という役回りだ。
だが、ロウェルはどことなく、腑に落ちないものを感じていた。
本当にセレンティーネ王女は、そのように動くのだろうか。
ロウェルに彼女との直接的な面識はないが、そのような強行に走る性格とはどうしても思えない。現状、アレイストに危害を加えようとするでも、引きずり下ろそうと策を弄するでもなく、何か国王の目に止まるような成果を出そうと愚直なまでの努力をしている人物だ。
そんな王女なら、もちろん不満は抱きつつも任地へ向かい、領地を盛り立てることに注力するのではないだろうか。
そしてそんなことは、アレイストもよく分かっているはずだ。
彼女の愚かなまでの真っ直ぐさに、アレイストは羨望を感じている。本人は認めずとも、ロウェルにはそれがよく分かっていた。
「……アレイスト、もしそれが上手くいったとして。その後、セレンティーネ殿下をどうする気なんだ」
「殺す」
端的な言葉に、ビクッと身体が震えた。
アレイストは温度のない目をしたまま続ける。
「当たり前だ。反逆者は死をもって罰せられる。そうだろう?」
「あ、ああ……」
彼の中でこの計画は決定事項なのだろう。立ち尽くすロウェルを、アレイストはただじっと見ていた。
ロウェルはこれまで、アレイストのどんな命令にも逆らったことはなかった。
だがこれは、頷いては駄目な気がする。
その迷いがロウェルの口を動かす。
「アレイストは、それでいいのか? 元王太子が反逆なんて、大きな騒ぎになる」
初めて食い下がったロウェルに、アレイストは目を眇めた。
「馬鹿を言うな。表向き、反逆など存在させない。姉上は、私がこの手で殺す」
つまり、内々に処理した上で後顧の憂いを断つということだ。
そこまで決めているのなら、ロウェルにもう言えることなどない。
分かった、と頷いてすぐ仕事に取り掛かるべきだ。
セレンティーネ王女はそう時間を開けずに城を発つだろう。準備も必要だ。懐に潜り込むなら、早く動いた方がいい。
了承の言葉を口にしようと顔を上げた時、アレイストと目が合った。
ロウェルは息を飲んで、発そうとしていた言葉が出なくなってしまう。
アレイストの人生から「姉」が消えた後、一体彼はどうなるのだろうか。
その時、ふと疑問が湧いた。
どうして、「今」なんだろう。
セレンティーネを籠絡し、反逆を起こさせるなどいつでもできたはずだ。むしろ、王都にいる間であれば、ロウェルを介して後ろ暗い貴族と繋がらせて一網打尽にすることで、国家の膿出しも終わらせてしまう方が、普段のアレイストらしい。
まるで、遠ざかろうとする姉を、手元に引き戻そうとするような――。
「っ……」
ロウェルは一歩、二歩とアレイストに近付く。
「――俺は、納得できない」
アレイストの目が見開かれるのを、嫌な音を立てる心臓を無視しながら見つめた。
この十七年間で、初めて口にした「反論」だった。
だが、一言発してしまえば、止めることなどできない。ロウェルは捲し立てるように続けた。
「王都から離れた王女に何ができる? たしかに不安の芽ではあるさ。けど、それが本当に脅威と成り得るのは一体何年後の話だ? その間、お前は一層ここで地盤を固めるのに? 今まで強行策に出なかった王女が、今更そんな手を取るとは俺には到底思えない。違うか?」
反証を並べ立てるが、アレイストは俯いたきり何も言わない。表情も窺えず、何を思っているのか全く分からなかった。
黙ったままの彼に勢いを削がれたロウェルは、そこで言葉を切って、弱々しく問いかける。
「……なあ、本当は…何が目的なんだ? 何がお前をそんなに――」
「うるさいっ!!」
突然激高したアレイストは、キッと顔を上げてロウェルを睨んだ。
「お前は私の言うことを聞いていれば良いんだ! どうして黙って従えない!?」
「アレイスト、でもこんなのは……!」
「黙れよっ!! 姉上もだ! どうしてそんな風に諦められる!? どうして、簡単に『陛下を支えろ』なんて……っ」
泣きそうな声で叫ぶアレイストに、ロウェルは思わず手を伸ばした。意図があったわけではない。ただ、無意識に抱きしめようとしたのかもしれない。
しかしそれより早く、アレイストの手がロウェルの胸倉を掴んだ。前屈みになっていたせいで、難なく体勢を崩されると、そのまま何故かベッドに仰向けで転がされた。
「ア、アレイスト……?」
暗い、沈んだ目と視線が絡む。
「お前は私の命令を拒むんだな?」
静かな問いにたじろぐ。
これは、解答を間違えれば取り返しがつかない気がした。
ロウェルは慎重に口を開く。
「拒みたい、わけじゃない。でも、俺は……、この選択をした後、お前が傷付くんじゃないかと思ってる。だから、違う方法でお前の気が済むなら、と言いたかったんだ」
「…………そんな方法、無ければ?」
「従う。お前の望み通りに動く」
間髪入れずに返したことが功を奏したのか、ロウェルの服を掴んでいたアレイストの手がほんの少し緩む。
だが、澱んだ目は変わらず、ロウェルを見つめていた。
「望み通りに、ね。どんな事でも?」
「ああ」
「今すぐ死ねと言えば死ぬのか?」
ロウェルは頷いて言った。
「俺の命は、全てお前のものだから」
「……なら」
何の感情も感じない目をしたまま、突然アレイストは、ロウェルのシャツの前ボタンを引き千切った。
唐突な行動に目を剥いていると、無感情にアレイストが腹の筋を指で辿った。
「死ぬ必要も、姉上のところに行く必要もない。その代わり――」
臍を撫で、ベルトに触れ、その下にあるものをズボン越しに掴んだ。
「私が何をしても、絶対に離れないと証明してみせろ」