初稿置き場
#夢見る少年と未羽化の蝶
#夢見る少年と未羽化の蝶_二章
3
「失礼します」
ファルはアカデミーにある就職課の部屋から出たところで、知らず溜息が漏れた。
その手にはレンから勧められた、蝶の民研究所の行う体験入所に関しての詳しい資料だ。参加の手続きを終わらせると、やり取りを代行しているアカデミーの職員から渡されたものだった。
体験の概要、当日までに用意するもの、集合場所、持ち物――、そういったものが記された書類は妙に重く感じる。
「……レンがいる。大丈夫だ」
震えそうになる手をぎゅっと握りしめて、もう一度深く息を吐いた。
この蝶の国へ亡命するまでの間、ファルは両親と共に隣国の違法な研究所にいた。
自分たちを、「蝶の民」を、実験動物のように扱っていたあの場所とは違う。
それは分かっているが、ほんの少しの怖さを感じていた。
それでも、体験に行こうと思ったのは――
「……僕は、」
レンは初めて会った時から変わらない。自身が違うからこそ「蝶の民」に憧れを抱き、その研究者になるという夢を叶えようとしている。
けれどファルは、いまだに未来が見えずにいた。
ファルは己の黒い髪を摘まむ。
羽化する前の蝶の民に多いその髪色は、子供のまま成長できないでいる自分をこれ以上なく表しているように思えた。
適齢期を超えても蛹にすらなれない自分は、その心もまだ羽化出来ずにいる。
これで、何か変わってほしい。
そんな縋るような気持ちで、これまで目を背けていたものと向き合おうとしていたのだった。
2025/09/07 00:00:00
« No.49
No.51 »
作品一覧
改稿版更新中
玉座の憧憬 アレイスト×セレンIF
:小説・男女恋愛・バッドエンド・
R18
・
本編読了後推奨
初稿更新終了
ツンデレ王子様の結婚事情
:漫画(字コンテ)・BL
玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF
:小説・BL・
R18
・
本編読了後推奨
初稿更新中
ツンデレ王子様の結婚事情
:漫画(下書き)・BL
愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
:漫画(字コンテ)・BL・
R18
夢見る少年と未羽化の蝶 二章
:小説・BL
誓約の姫
:ゲームシナリオ・男女恋愛
改稿版完結
血塗れ聖女を拾ったのは
:小説・男女恋愛(
改稿版
)
玉座の憧憬 本編
:小説・男女恋愛(
改稿版
)
検索
カテゴリ
(カテゴリを選択)
血塗れ聖女を拾ったのは (1)
玉座の憧憬 本編 (36)
ツンデレ王子様の結婚事情(下書き) (6)
ツンデレ王子様の結婚事情(字コンテ) (1)
愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)(字コンテ) (22)
夢見る少年と未羽化の蝶 二章 (20)
誓約の姫 (6)
玉座の憧憬 アレイスト×セレンIF (2)
玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF (17)
ハッシュタグ
玉座の憧憬
(55)
玉座の憧憬_本編
(36)
愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)_字コンテ
(22)
愛する貴方と「番」を解消する方法(仮題)
(22)
夢見る少年と未羽化の蝶_二章
(20)
夢見る少年と未羽化の蝶
(20)
玉座の憧憬_ロウェル×アレイストIF
(17)
ツンデレ王子様の結婚事情
(7)
誓約の姫
(6)
ツンデレ王子様の結婚事情_下書き
(6)
玉座の憧憬_アレイスト×セレンIF
(2)
ツンデレ王子様の結婚事情_字コンテ
(1)
血塗れ聖女を拾ったのは
(1)
日付一覧
2026
年
(54)
2026
年
08
月
(1)
2026
年
03
月
(5)
2026
年
02
月
(48)
2025
年
(57)
2025
年
09
月
(8)
2025
年
08
月
(36)
2025
年
07
月
(7)
2025
年
06
月
(2)
2025
年
05
月
(4)
#夢見る少年と未羽化の蝶_二章 3
「失礼します」
ファルはアカデミーにある就職課の部屋から出たところで、知らず溜息が漏れた。
その手にはレンから勧められた、蝶の民研究所の行う体験入所に関しての詳しい資料だ。参加の手続きを終わらせると、やり取りを代行しているアカデミーの職員から渡されたものだった。
体験の概要、当日までに用意するもの、集合場所、持ち物――、そういったものが記された書類は妙に重く感じる。
「……レンがいる。大丈夫だ」
震えそうになる手をぎゅっと握りしめて、もう一度深く息を吐いた。
この蝶の国へ亡命するまでの間、ファルは両親と共に隣国の違法な研究所にいた。
自分たちを、「蝶の民」を、実験動物のように扱っていたあの場所とは違う。
それは分かっているが、ほんの少しの怖さを感じていた。
それでも、体験に行こうと思ったのは――
「……僕は、」
レンは初めて会った時から変わらない。自身が違うからこそ「蝶の民」に憧れを抱き、その研究者になるという夢を叶えようとしている。
けれどファルは、いまだに未来が見えずにいた。
ファルは己の黒い髪を摘まむ。
羽化する前の蝶の民に多いその髪色は、子供のまま成長できないでいる自分をこれ以上なく表しているように思えた。
適齢期を超えても蛹にすらなれない自分は、その心もまだ羽化出来ずにいる。
これで、何か変わってほしい。
そんな縋るような気持ちで、これまで目を背けていたものと向き合おうとしていたのだった。