初稿置き場
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玉座の憧憬 本編:小説・男女恋愛
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ツンデレ王子様の結婚事情:漫画(字コンテ)・BL
玉座の憧憬 アレイスト×セレンIF:小説・男女恋愛・バッドエンド・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 アレイスト×セレンIF:小説・男女恋愛・バッドエンド・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
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#玉座の憧憬_本編 36
その後、アレイストはセレンと顔を合わせぬままとんぼ返りしていき、数日後にはセレン自身もアキュイラへと戻った。
数ヶ月ぶりに顔を合わせたミイスは、人目も憚らず大泣きしたあと、心労などで出発時よりも更に痩せたきり、まだ体型の戻っていないセレンに気付くと、誰が止める間もなく、ロウェルの頬に平手打ちが飛んでいた。
ミイスの言い分としては、「貴方がついていながら、どうして姫様がこんなことになっているんですか!」とのことだ。ロウェルは返す言葉もないのか、ただただ頭を下げるばかりだった。
こうして「誘拐されていた」セレンは、まるで何事もなかったかのように、アキュイラへと戻った。
その筋書きが真実ではないことくらい、皆分かっていただろうに、誰も追求してくることはなく、セレンはこの恩に報いるためにも、一層領主業に邁進していった。
それから数年。
セレンの姿は王都の城内にあった。
今度は押し入ったわけでは当然なく、今宵の主役の姉として招待をされた席だ。
今日は、主役――アレイストの婚礼が行われていた。
日中に誓いを終え、今はパーティーが行われている。セレンはアレイストの代わりに、ファーストダンスを終えて壁際まで抜けてきたところだ。
「ほい」
差し出されたグラスに顔を上げる。
「ありがとう、ロウェル」
パートナーとして出席しているのは、もちろんこの男だ。今のところ、婚約者ですらないのだが、当然のように一緒にいる。
セレンは細いグラスに軽く口を付けつつ、新妻と談笑するアレイストの姿を見つめた。
表情がとてもやわらかい。
王太子としての笑顔でも、あの夜に見た寂しげな微笑でもない。
そのことに安堵して――、安堵できている自分にもほっとする。
「アレイストも随分、落ち着いたみたいね」
「あぁー、まあ。最初は結構荒れてたけどな」
セレンは目を眇めて、子供の成長を見守るような目をしているロウェルに、胡乱な視線を向けた。
「そうね。あなたは頻繁にアレイストと会ってるものね。わたしに『傍で見てろ』とか言ってたくせに、殆どいやしないんだから」
「ちょ……、殆ど、ってことはないだろ。月一くらいでしか……」
「往復の時間を考えたら、半分はいないじゃない」
「うぐっ……」
しどろもどろになるロウェルに多少は溜飲が下がり、セレンは肩を竦めた。
「でも、奥様とも上手くいってそうだし、そろそろ返してもらわないとね。……ねえ、ロウェル」
「なんだ?」
「結婚する?」
「ぶっ!」
飲んでいたワインを吹き出したロウェルは、げほげほと涙目で咳き込みながら、こちらを見上げる。
「……本気か?」
「だって、アレイストの縁談も纏って、もう気兼ねする必要はないし。正式に籍を入れれば、もう少しアレイストの方へ行く頻度も減らしてくれるでしょ」
「それは、まあ……。そろそろ弟離れしなきゃなぁ、とは思ってたところだし……」
「じゃあ、いいじゃない」
「いや、それはそうなんだけど」
ロウェルは何やら唸ったあと、はあ、と大きな溜息をついた。
それから、セレンの空いている方の手をうやうやしく掴んだ。この数年で、すっかり剣ダコの消えた手は、ほっそりとした令嬢の手で、セレンは自分自身でも不思議に見えるときがあった。
ロウェルはそんな手の指先に、ちゅっとキスを落とした。
「答えは……、その、イエスだ。イエス、だが」
「『だが』?」
「プロポーズは、今度俺からやり直させてくれ」
なんとも渋い顔でそう言ったロウェルに、セレンはぷっと笑ってしまった。
「ふふ、なら期待して待ってようかしら。でもいいの? 仕切り直しをしようとしてる、なんてミイスの耳に入ったら、口煩くダメ出しされそうだけど」
「う゛……。たしかに……」
アキュイラに戻って以降、ミイスはやたらとロウェルに手厳しい。だがロウェルも、それを甘んじて受け入れているので、思うところがあるのだろう。
ちなみにセレンは内心、まるで姑の嫁いびりだなぁ、と思っているが、それは内緒だ。
「いや! でも、やるから。待っててくれ」
意気込んで宣言するロウェルに、セレンはくすくすと笑った。
「なら、楽しみにしてる」
セレンはロウェルの手に指を絡めて、先程より一歩距離を詰めた。彼の肩に身体を預けて、目を閉じる。
彼の隣が、わたしの居場所。
これからも――、死が二人の元に訪れるまで。
終