初稿置き場
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_本編
35
「…………、」
朝焼けの中、目を覚ましたセレンは、ベッドの上でのそりと起き上がって、窓から見える白い空を見ていた。
久し振りに――、本当に久し振りに、夢も見ずに眠った気がする。
昨夜、アレイストと、ロウェルと、交わした言葉の一つ一つはまだ鮮明だが、どこか遠い過去のようにも思えた。
とても、不思議な気分だった。
「……ねぇ、母様」
今日は黙って傍に立っているだけの母に呼びかける。
ただ恐ろしかった存在が、今は少しだけ違って見える。
居場所が欲しくて必死だった。
自分と母は、きっと同じ気持ちを抱えていただけなのだ。
「わたし、はじめて今、母様が生きてらっしゃったら――、って思った。生きていらっしゃったら、どういう思いで玉座に執着していらっしゃったのか、……その心に、誰が住んでいたのか、聞くことができたのに、って」
幻影の母は黙したまま、何も語らない。
当たり前だ。セレンは「本当の母」のことなんて、きっと何も知らないのだから。
「母様、わたし……王には、
な
(
・
)
ら
(
・
)
な
(
・
)
い
(
・
)
わ」
王族の血が流れていないから、だとか、そんな表面的な理由なんかじゃない。
これはやっと取り戻しはじめた、「わたし」の決断だ。
「だから……、いつかわたしが母様と同じ場所へ行った時、沢山恨み言を聞くわ。でも、少しだけ見ていてほしいの。……ロウェルと生きていく、わたしを」
母は最後まで何も言わなかった。
でも、それでいいのだ。
きっとこれからも、母の夢に苦しむ夜はあるだろう。それでも、もう少しだけ生きてみることにしたから。
「またね、母様」
セレンは立ち上がって、おもいっきり伸びをした。
本当に久し振りに感じる、清々しい朝だった。
2025/08/22 00:00:24
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「…………、」
朝焼けの中、目を覚ましたセレンは、ベッドの上でのそりと起き上がって、窓から見える白い空を見ていた。
久し振りに――、本当に久し振りに、夢も見ずに眠った気がする。
昨夜、アレイストと、ロウェルと、交わした言葉の一つ一つはまだ鮮明だが、どこか遠い過去のようにも思えた。
とても、不思議な気分だった。
「……ねぇ、母様」
今日は黙って傍に立っているだけの母に呼びかける。
ただ恐ろしかった存在が、今は少しだけ違って見える。
居場所が欲しくて必死だった。
自分と母は、きっと同じ気持ちを抱えていただけなのだ。
「わたし、はじめて今、母様が生きてらっしゃったら――、って思った。生きていらっしゃったら、どういう思いで玉座に執着していらっしゃったのか、……その心に、誰が住んでいたのか、聞くことができたのに、って」
幻影の母は黙したまま、何も語らない。
当たり前だ。セレンは「本当の母」のことなんて、きっと何も知らないのだから。
「母様、わたし……王には、ならないわ」
王族の血が流れていないから、だとか、そんな表面的な理由なんかじゃない。
これはやっと取り戻しはじめた、「わたし」の決断だ。
「だから……、いつかわたしが母様と同じ場所へ行った時、沢山恨み言を聞くわ。でも、少しだけ見ていてほしいの。……ロウェルと生きていく、わたしを」
母は最後まで何も言わなかった。
でも、それでいいのだ。
きっとこれからも、母の夢に苦しむ夜はあるだろう。それでも、もう少しだけ生きてみることにしたから。
「またね、母様」
セレンは立ち上がって、おもいっきり伸びをした。
本当に久し振りに感じる、清々しい朝だった。