初稿置き場
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_本編
31
セレンは、ロウェルの眠る部屋の窓辺に立って、その先に広がる風景を眺めていた。
生まれ育った城の窓から見える、整備された庭とは違い、自然のままに近い草原が広がっている。
ふと気配を感じて振り返れば、いつ起きたのかロウェルがじっとこちらを見ていた。
「気分はどう?」
「まあ、そこそこかな」
彼が起き上がろうとするのを首を振って止める。
あの日、脇腹に受けた「掠り傷」は、見た目通り深いものだった。もう少し処置が遅れていれば失血しすぎて命も危うかったほどだ。
実際、馬車の中でレオが応急処置をする頃には、かなり朦朧とした様子で、この屋敷についてからも殆ど意識を失っていた。
「ここは?」
「……リーティエ公女の屋敷」
短い問いに答えるが、彼に驚いた様子はなかった。元々の目的地がこの場所だった何よりの証拠だ。
何故、とは思う。何故、リーティエ公女――アレイストの母の元に連れてきたのか。
だが最早、セレンにロウェルを疑う気持ちなどなく、ただ純粋に疑問だった。
「わたしをここまで連れてきたのは、公女と会わせるため?」
ロウェルは少し迷うように目を伏せたあと、頷いて答える。
「おそらく、アレイストは俺たちを追ってくる。どこまでも。それを止めさせられるのは……公女殿下だけだ」
初めて対面したリーティエのことを思い出す。
やわらかな雰囲気の、どこか少女のような人だった。
アレイストは、この少女のような女性を守るために、父からの召喚に応じたのだろうと悟った。
ふとロウェルから視線を外して、外を見る。
「ここは、本当にいいところね」
「ああ……」
時間も穏やかに流れて、空気はあたたかい。
ここの空気そのままのような彼女だけが、アレイストを変えることができる。
なんとなく、わかるような気がした。
2025/08/22 00:00:20
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生まれ育った城の窓から見える、整備された庭とは違い、自然のままに近い草原が広がっている。
ふと気配を感じて振り返れば、いつ起きたのかロウェルがじっとこちらを見ていた。
「気分はどう?」
「まあ、そこそこかな」
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あの日、脇腹に受けた「掠り傷」は、見た目通り深いものだった。もう少し処置が遅れていれば失血しすぎて命も危うかったほどだ。
実際、馬車の中でレオが応急処置をする頃には、かなり朦朧とした様子で、この屋敷についてからも殆ど意識を失っていた。
「ここは?」
「……リーティエ公女の屋敷」
短い問いに答えるが、彼に驚いた様子はなかった。元々の目的地がこの場所だった何よりの証拠だ。
何故、とは思う。何故、リーティエ公女――アレイストの母の元に連れてきたのか。
だが最早、セレンにロウェルを疑う気持ちなどなく、ただ純粋に疑問だった。
「わたしをここまで連れてきたのは、公女と会わせるため?」
ロウェルは少し迷うように目を伏せたあと、頷いて答える。
「おそらく、アレイストは俺たちを追ってくる。どこまでも。それを止めさせられるのは……公女殿下だけだ」
初めて対面したリーティエのことを思い出す。
やわらかな雰囲気の、どこか少女のような人だった。
アレイストは、この少女のような女性を守るために、父からの召喚に応じたのだろうと悟った。
ふとロウェルから視線を外して、外を見る。
「ここは、本当にいいところね」
「ああ……」
時間も穏やかに流れて、空気はあたたかい。
ここの空気そのままのような彼女だけが、アレイストを変えることができる。
なんとなく、わかるような気がした。