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玉座の憧憬 本編:小説・男女恋愛
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玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
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#玉座の憧憬_本編 27
セレンの問いかけで、ロウェルはアレイストとたしかに「友人」であった過去を思い出していた。
まだふにゃふにゃの赤ん坊だったアレイストに、ロウェルは「将来仕えるべき主君」なのだと引き合わされた。
主従として育った自分たちではあったが、幼少の頃は「兄弟」と言った方が近い関係性だったように思う。
三歳年下の自分を慕ってくれる男の子。身分は彼の方が上だったが、そんなことは関係ないと思っていた。
あの日までは。
年相応にやんちゃだったロウェルは、少々危険な遊びにアレイストを連れ出すことも少なくはなかった。「あの日」も、そんなよくある一日――のはずだったのだ。
アレイストの暮らしていた離宮の裏手にある森は、二人にとっていつもの遊び場で、ほんの冒険心でいつもより深い場所へ向かった。
いつもと違う景色に好奇心が刺激されて、繋いだ手を離した。そして、本当に一瞬だけ、アレイストから目を離してしまった。
悲鳴が聞こえたのは、すぐ後のこと。振り返った時には崖下に転落していくアレイストの姿が見えた。
それからはどうしたのだったか、よく覚えていない。
大人を呼びに行ったのか、それとも中々戻ってこない自分たちを発見してもらったのか。
ともかく気が付いた時には、アレイストは医者の治療を受け、命に別状はないことを知った。
だが――、落ち方が悪かったのだろう。折れた足の骨は神経を傷付け、アレイストの左足には麻痺が残った。
ロウェルが八歳、アレイストが五歳の頃のことだった。
ふ、とロウェルの意識が現実へと戻ってくる。
ちらりと背後に視線を向けると、セレンはやはり疲れが溜まっていたのか、眉間に深い皺を刻みながらも眠ってしまっていた。
ロウェルは一つ息を吐く。
辺りに気配はなく、とても静かな夜だ。
だからこそ、色々な思いが押し寄せてきて、思考を支配する。
アレイストは今、どうしているだろうか。
彼の傍を離れるという決断を、自分が下す日が来るなんて、ほんの少し前まで想像もしていなかった。
後悔が無い、とは言い切れない。
まだ、アレイストに負わせてしまったものの代償を、支払いきれてなどいないからだ。
十七年前のあの日、目覚めたアレイストは、一言もロウェルを責めなかった。
周囲の大人たちも、しばし昏睡状態だった彼の容態の方が心配だったのだろう。
誰も、ロウェルに責任を追求しなかった。
ロウェルは謝罪をする機会さえ、もらえなかったのだ。
「……いっそ、あの時お前が…泣いて俺を責めていたら、違ったのかな」
もちろん、罪悪感に苛まれただろう。でも、彼の気持ちを受け止めて、自分も相手が飽きるほどに謝って、そして――、今も友人のようにいられたのではないだろうか。
そんな風に夢想する時がある。
けれど、もう自分たちの関係は「友人」にはなり得ない。「主従」というには、絡まり合い過ぎた歪な関係だと思う。
控えめで優しい王太子殿下。彼は、ロウェルの前でだけは激情にかられ、八つ当たりをして、苦しげに顔を歪めて、ロウェルの心を幾度となく試した。
今回のセレンへの接触も、おそらくその一環だった。
――お前は私のために、一人の女を死地に追いやり見殺せるのか。
そう、問いかけられていたのだろう。
できる、と……思った。思っていた。
だが、真にアレイストを思うのならば、実行するより前に止めるべきだったのだ。
そのことに見て見ぬ振りをして、尽くすべきただ一人に報いたかった――。
「……アレイスト」
けれど、セレンと――自分と同じかそれ以上に他者に縛られた彼女と出逢い、もうその歪さに目を背けていることができなくなったのだ。
ロウェルはふらりと立ち上がって、眠るセレンの傍に膝をついた。
険しい顔をしているのに、無防備に眠る女――。
「セレン、俺は……」
彼女の首に手を添える。ひたりと肌が触れて、首筋の血管から彼女の鼓動を感じた。
「っ……」
パッと手を離して唇を噛む。
その喉は、簡単に縊り殺せてしまいそうなほどに細い。
同じ寂しさを共有できるセレンに、惹かれる気持ちがあるのは自覚していた。
けれど、アレイストの命がただ「彼女を殺せ」というものだったのならば。
葛藤の末に、実行してしまえていただろうという自分が今もいることに、ロウェルは気付いている。