初稿置き場

#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_本編 23


 セレンは馬車に揺られながら、じっと息を潜めて対面にいるアレイストの様子を窺っていた。
 暴漢に襲われ、弟と再会をして、今は二人きりで王都へ向かう馬車の中だ。
 どうしてこんなことになっているのか。そもそも、アレイストは何故あんな場所に――?
 疑問は尽きないが、彼に殆ど有無を言わせてもらえずに、こんなことになっている。
「姉上」
 不意の呼びかけに、セレンは思わずびくりと肩を跳ねさせながら顔を上げた。
 アレイストは笑みを浮かべていて……、何を考えているのか分からず、少しだけ不安を覚える。
「……なんだ?」
「いえ。あんな場所でお会いするなんて、驚いたなと思いまして」
「あ、ああ……」
 お前こそ、と返すより早く、アレイストが続ける。
「しかも、追われてましたよね。何があったのですか?」
「それは――」
 何と答えてよいのか分からず、口を噤む。
 いや、そもそもこんな場所まで来た自身の「目的」を考えれば、「世継ぎ」と二人きりの今は、最大の好機なのかもしれない。そんな気持ちが脳裏を掠める。
 だが結局は、剣の柄に手を伸ばすことはせずに、口を開いた。
「私にも…分からない。急に襲われたんだ」
「……、そうでしたか。それは怖ろしい。ご無事でよかった」
「そう、だな……」
 変わらぬ笑みを向けてくるアレイストだが、セレンの緊張が解けることはない。むしろ、その笑顔の裏で何を考えているのかが恐ろしく、握り締めた手は汗で粘ついている気がした。
 彼は何故あの場にいた?
 それを都合よく助けられたのは何故だ?
 どうして、当然のように王都へ向かっていると知っている?
 けれど、そう思うのは――、私が後ろ暗いものを抱えてこの場にいるせいかもしれない。
「――それで、今日は陛下にお会いされようと?」
「ああ……」
 アレイストの問いに、緩慢に頷く。
 そう。父王に会うために来たのは確かだ。
 だが、会った後どうしたらいいのだろう。譲位を迫る? それとも……
「それは、陛下もお喜びになるでしょうね。姉上の顔を見れなくなったのが寂しいと思っておいでのようですから」
「……それは、光栄だな」
 そんなことはあり得ない。扱いの厄介な王女を追いやれて、清々しているはずだ。
 セレンはそんな本音を心の奥底に封じ込めて、ぎこちなく口端を上げた。
 アキュイラへの赴任を命じられた日の怒りが、少しずつ再燃しはじめている。
 それを表情に出さないように気を付けつつ、セレンはふと窓の外を見た。
 ――今日、おそらく全てが終わる。
 数ヶ月ぶりの王都を見つめながら、セレンはきつく拳を握りしめた。

2025/08/22 00:00:12

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