初稿置き場
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玉座の憧憬 本編:小説・男女恋愛
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ツンデレ王子様の結婚事情:漫画(字コンテ)・BL
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玉座の憧憬 アレイスト×セレンIF:小説・男女恋愛・バッドエンド・R18・本編読了後推奨
玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
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#玉座の憧憬_本編 22
宿の階段を駆け下りて、セレンはそのまま外へと飛び出す。
だが、そのまま徒歩で王都まで行くわけにはいかないと思い出して、宿の裏手にある厩へと向かった。
もう誰も信用できない。
いや――、そもそも自分以外の誰かに頼ろうとしたこと自体、間違いだった。
一人でやり遂げなければ。ひとりで――、独りで。
セレンはきゅっと唇を噛み締めて、建物の角を曲がる。そして、厩の影が見えた時だった。
何か気配のようなものを感じて、セレンは反射的にそこから飛び退いた。
身体が動いた後で、そこに見知らぬ男が立っていることに気付く。その手には小さなナイフが握られていた。
柄を握る手はぶるぶると震えており、明らかに荒事に慣れている雰囲気ではない。こちらを睨む血走った目には、怯えのようなものが滲んでいる気がした。
「……誰だ」
セレンは警戒したまま、静かに問う。
「銀髪の、女……。お前…お前を殺せば……!」
咆哮を上げて突進してくる男の攻撃を、セレンは躱しながら、裏口らしき門から外へ出た。
あんな場所で大立ち回りをしていては、ロウェルが追いかけてくるかもしれないと、脳裏に浮かんだからだ。
――馬鹿なことを。
細い路地を駆けながら、セレンは自嘲する。
彼はとっくに愛想を尽かして、どこかへ行ったに違いない。
なのに、心のどこかでは追いかけてきてほしいとも思っていた。
セレンは浮かぶ思考を振り払ってから、ちらりと後方を見る。
ナイフを持った男は、まだ何かを喚きながら迫ってきていた。
彼の口振りから察するに、セレン個人に恨みがあっての行動ではないだろう。
ならば、誰かに雇われた……?
けれど、セレンが今王都に向かっていることを知る人物なんて――。
だが、そこまで考えた所でセレンの思考は途切れた。
「あっ……」
道を曲がった所に人が立っていて、避けようと身体を捻って転びそうになったからだ。
しかしそれを抱き留められて、どうにか転倒を免れる。
「っ、すまな……――、え……?」
顔を上げると、その人物と目が合った。フードを目深にかぶっているが、転びかけたセレンからはその顔がよく見える。
そこにある相貌を、信じられない気持ちで見上げた。
彼はセレンを立たせると、左足を引き摺りながら一歩前へと出た。
「ご心配なく」
それだけ言った彼は、セレンが走ってきた方向へと向かう。
「待っ――」
彼が持っていた杖を捻ると、銀の刃に陽光が反射して、一瞬目が眩むほど眩しく光った。
セレンがそれにたじろいでいる間に、彼の姿が見えなくなり――一呼吸後には、辺りは奇妙なほど静かになった。
そして、コツという杖をつく音と共に、もう一度フードの男が姿を現した。
「お怪我はありませんか、姉上?」
「……どうして、ここに……、アレイスト」
微かな血臭と共に立っているのは、紛れもなく異母弟アレイストだった。