初稿置き場
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玉座の憧憬 本編:小説・男女恋愛
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ツンデレ王子様の結婚事情:漫画(字コンテ)・BL
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#玉座の憧憬_本編 18
ミイスと碌な会話もないまま、日々が過ぎてゆく。
セレンの心に凝る苛立ちと焦燥は、時間を追うごとに募っていっていた。
「セレンティーネ」
耳元に落ちる男の声に、セレンは目蓋を押し上げる。
「あ……」
自分はいつの間に眠ってしまっていたのだろう。
セレンは知らぬ間に突っ伏していた机から身を起こすと、目の前に立つロウェルを見上げた。
「ごめん、返事がなかったから心配で入ってしまったんだ」
「…………そうか。……いや、構わない。お前なら」
思ったままの言葉がぽろりと落ちる。ロウェルは虚を突かれたように一瞬目を見開いたが、すぐに口元へ笑みを浮かべた。
「……光栄だよ」
どこか浮かない笑顔のまま、彼はセレンの方へ手を伸ばす。
「それより、こんな所で寝るなんて……。やっぱりまだ、よく眠れないのか?」
やわく頭を撫でられて、また目を閉じそうになるのをどうにか堪えた。ロウェルの問いに小さく頷いて、手からこぼれ落ちていたペンを拾い上げる。
だが、すかさずそれが上から抜き取られてしまった。
「こら。少しは休め。ほら、立って」
隣まで回り込んできたロウェルに、腕を取られて腰を上げる。
「だが……」
抵抗の言葉は弱く、そのまま部屋のソファまで移動させられてしまう。
ロウェルの傍にいると、どうしてこんなにも素直に従ってしまうのだろう。目まぐるしく回る思考が緩んでしまって、上手く考えが纏められなくなってしまう。
隣に腰を降ろしたロウェルに肩を引き寄せられて、彼にもたれかかる格好となる。抵抗しようと腕を上げることすら億劫で、セレンはそのまま身体の力を抜いた。
こんなことを、している場合では……ないのに。
「なあ、セレンティーネは何に思い悩んでいるんだ?」
「…………言っても詮の無いことだ」
ロウェルがセレンの髪を撫でる。
「教えてよ。俺は知りたい」
「――っ」
毒のように甘い囁きだと思った。
頭が痺れて、思考力を奪う。
この男に全て投げ出してしまえば、私は楽になれるのだろうか――。
セレンは小さく口を開いた。
「母の……。母上の、声が、聞こえるんだ」
「……どんな」
「私を責める、声……。私が、母の期待に応えられない、から」
セレンはきゅっと唇を噛んだ。
全て、全て――、私が悪い。
アレイストのように、一目で王の子と分かる男として生まれられなかった。
誰もが認めるような、国王の素質もない。
だというのに、母から受け継いだのは銀の髪ばかりで、王に目をかけてもらえるような愛嬌すら持ち合わせてはいなかった。
今こうなっているのは、全て私自身のせい。
「――だから、私はここで……、もっと、もっと……もっと、努力をしなければ」
「…………それは、いつまでだ?」
「え……?」
セレンはロウェルからの問いに、ゆっくりと目蓋を上げた。
「ここで努力して、成果を出して――、都に戻る?」
顔を上げて彼の顔を覗き込むと、ただじっとこちらを見つめる瞳と目が合った。セレンは戸惑いながらも頷く。
「都に戻って、また努力して……。『王になる』?」
セレンの目的をはっきりと口にされて、息を飲む。
でも、そうだ。その通りなのだ。私が「王になる」には、それしか。
だが、ロウェルは小さく首を横に振った。
「セレンティーネ。それは一体何日――、何年かかるんだ? それまで、こんな生活を続けるのか?」
「……それは」
何も答えられない。
分かってはいるのだ。こんな日々を長くは続けられないことくらい。
いずれ限界が来ることくらい。
でも、じゃあどうすればいい?
どうすれば、母の願いを叶えられる?
どうすれば――。
「――『奪ってしまえ』」
ポツリと落ちたロウェルの呟きに、セレンはハッと顔を上げた。
「本当は分かっているんだろう? こんな場所でいくら努力したところで、どうにもならない、って」
セレンは息を飲んだ。
ずっと見ない振りをしてきた現実を直視させられて、酷く胸が軋む。
「だ、だが……」
「怖い?」
端的な問いに、ぐっと言葉が詰まった。
怖い。たしかに、自分は恐怖を感じている。
だが、それは一体「何」に対してだろう。
王位を簒奪すること自体なのか。
それを仄めかすロウェルへなのか。
もしくは、その選択も消去できないでいる自分自身へなのか。
だがそれらは、「このまま何も出来ずに死んでいく」こと以上に怖ろしいことなのだろうか。
「……私に、出来ると思うか」
セレンの呟きにロウェルは目を細めた。
「他に誰が出来る?」
背後にまた、母の気配を感じた気がした。
「…………私は、王にならねばならない。ロウェル、付いて来てくれるか?」
彼はセレンの手を取ると、指先に口付けを落とした。
「ああ。全てが終わるその瞬間まで、俺はセレンティーネのそばにいる」