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#夢見る少年と未羽化の蝶_二章 17
記念墓地まで辿り着いた一行は、ここの管理人から話を聞き、その後記念碑が並ぶエリアへと足を踏み入れていた。
ファルはゆっくりと石碑の間を歩きながら、小さく息をついた。
いつもは祖父母の名前が刻まれた場所まで一直線に向かうため、違う道を通るのは少し景色が新鮮に映る。
また、いつ訪れてもあまり人気のないこの場所に、何人もの人影が見えるのも不思議な気分だった。
ファルはレン以外の体験入所者が物珍しげに石碑の間を散策するのを、少しばかり羨ましいような悲しいような気持ちで見つめる。
アカデミーの通常課程中に授業の一環で一度は訪れているはずだが、「普通」の国民にとっては、あまり来ることのない場所だ。
そういう生い立ちを持てたことが、ほんの少しだけ羨ましかった。
その時、そっと傍に気配を感じて振り返る。
「……エルジュさん」
「ファル、体調はどうです。きちんと眠れていますか?」
思わぬ質問に首を傾げながらも頷く。
「え? ええ、はい」
「なら良かったです。繭の解剖にはショックを受ける人もいます。貴方も顔色が良いとは言い難かったので」
たしかに今回のようなことがなければ、そうそう解剖――それも羽化に失敗した被験者の肉体を見ることはない。人によってはトラウマになることもあるのだろう。
特に一見には解剖の様子にショックを受け、途中離脱したように見えただろうから、心配ももっともだった。
「大丈夫です。そういう意味では、もう気にしていません」
「そうですか」
「あ、でも……」
所員でもない人間が聞いてもいいことなのかと言い淀むファルに、エルジュは続きを促すように小首を傾げた。
「あの時亡くなった繭は……、その後どうなったんですか?」
あの様子を見て、まさか「そのまま打ち捨てられている」とは思わないが、それ以外にどうなるのか見当もつかず、おそるおそる訊ねる。
だがエルジュは、そんな事かとでも言うように軽く目を瞠って、記念墓地の奥へ視線を向けた。
「通常はご家族の元へお返ししますが……。身寄りのない場合は、事前にご本人と話し合いをします。今回の場合ですと、一定期間引き取り手が現れないことを確認した後、あそこの合祀墓へと埋葬される手筈です」
ファルもエルジュの視線を追って、花で溢れたその墓を見る。
元々、この国までの亡命中に命を落とすなどして、遺体もしくは骨となって辿り着いた蝶の民を埋葬する場所だったと聞いている。
今はそういった人々も一緒にいるのだと聞いて、寂しくなくていいのかもしれないな、と思う。
「……ちゃんと、人として扱ってくれるんですね」
「当たり前でしょう。そもそも、こちらの手が及ばず死なせてしまった方でもあるんです。せめて最期くらいは最大限丁重に扱わなければ……」
「そうですよね」
当然、という顔で言うエルジュに、どこかほっと力が抜けた。
レンも彼らと肩を並べていくのだと思えば、それがとても嬉しい。
ファルはふと視線を巡らせて、レンの姿を探す。
「あ……」
彼はいつも訪れるファルの祖父母の名前を前に、じっと立ち竦んでいた。
「……エルジュさん」
エルジュが目を瞬かせる。
「レンは……、研究者になりますよね……?」
エルジュがレンの姿を捉え、目を眇めた。
「……それは彼次第でしょう」
彼の返答は曖昧だった。
それは、入所への面接や試験について言っているのか、それともレンの心の内についてを言っているのか――。
もしもレンの目標が変わってしまったのなら、ファルはきっとそれでも彼の選択を尊重するだろう。
けれど――、もし、自身の過去やそれを吐露したことが、夢を叶えることを躊躇わせているのだとすれば……。
それは耐え難いほどやり切れない。
ファルはきゅっと拳を握って、レンの沈んだ横顔を見つめるのだった。