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#夢見る少年と未羽化の蝶_二章 16
いつもはレンと二人で歩く記念墓地までの道を、今日は大所帯で辿る。
ファルは吹き抜ける冷たさの混じる風に目を細めた。
先導する研究所の所長だという男の後をついて歩きながらも、彼の声は耳を素通りしてゆく。
蝶の民研究所の体験入所――最終日。
研究所の所員たちと共に、ファル、レン、そして残りの体験入所者三人は、王都の外れにある記念墓地に訪れていた。
研究者という道を選ぶのなら、決して避けては通れない、非道な研究の犠牲となった人々についての話。それらを訥々と語る所長の言葉を聞き流しながら、空を見上げる。
実際その「非道な研究」が行われていた現場にいた過去を持つファルとしては、彼の言葉はやはりどこか現実感に欠けている。
実際に経験したことではないから当然といえば当然だろう。
それに今のファルには、それ以上に気にかかることがあった。
隣へチラと視線を向ける。
普段ならば真剣な顔で、それらの言葉を聞いているであろうレンのことだ。
だが彼もどこか上の空な様子で、だが同時に深く思い悩むような表情もしている。
「……、」
ファルはそんな彼に声をかけようか迷って、やはり口を閉じた。
こうして口を噤むのも、レンが思い詰めた表情をしているのも今にはじまったことではない。
死亡した繭の解剖を見た日――いや、ファルが過去を語ったあの時から、もうずっとその表情が晴れないのだ。
やっぱり僕のせいだろうか――。
ファルはそんな罪悪感にチクチクと蝕まれている。
今彼が何を考えているのかは、何度も聞こうとして聞けず、正確なところは分からない。
だが、その表情が曇るきっかけとなったのは、間違いなくファルが過去を吐露してしまったせいだろう。
はじめは、「ファルを体験入所に誘ってしまった」とでも後悔しているのかと思っていた。だが、彼の誘いを受けたのも、解剖に立ち会うと決断したのもファル自身だ。レンを責めるつもりもないし、彼がもし謝罪でもしてこようものなら、そう伝えるつもりだった。
だが、沈んだ様子を見せるようになって一日が経ち、二日が経ち――、もしかするとレンが思い悩むのは違う点なのかもしれないと思うようになった。
それが「何」なのかまでは分からなかったが。
自分はレンの存在に、とても救われている。
繭の臭いを契機に蘇った記憶は、決して愉快なものではない。それでも、そのことについて一種の区切りが付けられているのは、あの日、あの時に、彼が傍でじっと話を聞いてくれたからだ。
そんなレンが悩みを抱えているのならば、自分も支えたいと思うのは当然だった。
だが不用意に訊ねてしまえば、「悩んでいる」ということすら隠されてしまうのではないかと怖くて聞けずにいる。
「――レン、行こう。置いていかれそうだ」
自然と遅くなっていた歩調のせいで、前方を進む一行と、少しばかり距離ができていた。
ファルが声をかけると、レンがハッとしたように顔を上げる。
「あ、そうだな。ごめん」
早足で歩きはじめた彼の背中を、ファルは見つめるしかできないでいた。