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玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
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玉座の憧憬 ロウェル×アレイストIF:小説・BL・R18・本編読了後推奨
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#夢見る少年と未羽化の蝶_二章 12
レンたちは羽化した少年を医師へと引き継いだ後、ようやく外へと出た。
一時は生存も危ぶまれた少年だったが、今のところ大きな問題もないようだった。正確なところはこれからはっきりするだろが、エルジュによると、身体に機能面の障害が発生しているならば、既に分かる形で出ていることが多いらしい。
つまり、ひとまずは安心して良いとのことで、レンもファルもほっとしていた。
少年の家を出たあと、エルジュがすぐに通信用の魔導具で研究所と連絡を取りはじめた。小型の通信装置はまだまだ高価なものなのだが、こういった不測の事態に備えて、外回りの際には携帯を義務化されているようだった。
「――ええ、はい。彼は無事……、はい。はい……、え?」
エルジュの視線がこちらを向き、レンとファルは顔を見合わせる。
程なくして通信を終わらせたエルジュに、レンが問いかけた。
「あの、何かありましたか?」
「ええ……。……先程、研究所にてお預かりしていた繭が一人、亡くなられました」
「――っ!」
蝶の民にも、遺伝病のようなものと言えばいいのか、家系的に羽化時に問題が発生しやすい血筋の者がいるらしい。そういった人々の中には生存率を上げるために研究所内での経過観察を望む場合があるという。そんな幾人かの内の一人が亡くなった、という報告だった。
レンたちが言葉を失っていると、エルジュが静かに口を開いた。
「魔素の影響なのか……、こういった異常が同時に発生することは稀にあります。先程の彼は助けられましたが――、手を尽くしても力が及ばないこともあるのが現実です」
エルジュは通信の魔導具を鞄にしまってから、レンたちを順に見た。
「これから、死亡した被験者の解剖が行われます」
隣でファルがひゅっと息を飲んだ。
「レン、貴方は入所を希望していましたね?」
「は、はい」
「所長が体験入所者の立ち合いを許可しています。今後、貴方が研究者の道を進むのならば、見ておくべきかと」
「――はい」
羽化できずに死んでしまった被験者を見る――。そのことに、恐怖を感じないわけではなかった。
だが、エルジュの言う通りだ。目を逸らすべきではない。
レンがしっかりと頷くと、エルジュが頷き返してから、今度はファルの方を見た。
「ファル」
「…………はい」
彼は見るからに青褪めていて、顔色が悪かった。
「これは、体験入所のプログラムには含まれていません。立ち合いを希望しないのであれば、ここで帰っても何も問題ありませんよ。……どうしますか」
「ファル……」
レンの名を呼ぶ声も聞こえていないのか、ファルは青い顔のままエルジュを見ていた。
このまま帰った方がいいのではないか。
レンはそう思ったが、ファルは不意にぎゅっと目を閉じて息をはくと、再び顔を上げた。
「……行きます」
エルジュの目が少しだけ見開かれる。彼もレンと同じく、帰宅を選択すると予測していたのだろう。
だが、ファルの覚悟をした目を見て、二度は聞かなかった。
「わかりました。では二人とも、戻りましょう」
足早に研究所への道を戻るエルジュの後を追う。
レンはファルに何も声をかけられぬまま、無言で歩を進めるのだった。