初稿置き場

#夢見る少年と未羽化の蝶
#夢見る少年と未羽化の蝶_二章 7


 座学の日程はあっという間に過ぎていき――、三日後。
 レンとファルを含む参加者たちは、研究所の前に集められていた。
「では、これから被験者の方の元へ向かいます」
 エルジュの言葉に、緊張と不安で顔が強張っている者も多い中、レンは内心「やっとこの日が来た!」とガッツポーズをしていた。
 三日間の講義が終了し、今日はいよいよ研究の被験者たちの元へ行くことになっている。
 現在蛹期に入っている協力者たちの経過観察に同行させてもらう形だ。
 蝶の民たちは蛹化すると、まず髪が一瞬で脱色する。それを合図に安全な場所を探したあと、そこで繭を形成するのだ。その繭に包まれている期間が蛹期と呼ばれ、約三ヶ月から半年間を繭の中で過ごす。
 繭の中では、一度肉体が重要な生命維持器官を残して液状に溶け、その後身体が再構築されることで、羽化をする。
 一般的に羽化した蝶の民は、髪色が変化し、容姿が整う。まさに、芋虫が蝶に変化するかのごとく、だ。
 また、魔法の才に目覚めたり、運動能力が向上したり、とこちらは個人差が大きいものの、総じて身体機能の改善が発生しやすい。
 ともかく、蛹期の蝶の民は、かなりデリケートなのだ。下手な刺激は中の人間を殺しかねないため、研究は細心の注意を払われている。
 他国での非人道的な研究は、蝶の民に起こる肉体の再構築を人為的に行い、より望む肉体へと変化することを目的としている――らしい。
 レンから言わせれば、自身の肉体強化ごときのために、この美しい生態を持つ蝶の民たちを殺したのかと、全く理解に苦しむ話だった。
 一方、蝶の国での研究は、むしろ医療行為に近いものがある。
 自然界での蝶の羽化が失敗することもあるように、蝶の民も羽化に失敗して死んでしまうことが稀にある。蝶の民研究は、そういった羽化の失敗率を下げ、より安全に、より健やかに、蝶の民が生きていくことを目的としていた。
 今回同行する被験者の定期観察も、そういった羽化の失敗を回避するためのものだ。
 被験者は、事前に本人の許可を得て観察させてもらっている対象も多いが、中には蛹期の序盤に異変が起こり、家族から助けを求められて、という場合もあるのだそうだ。
 ちなみに今回向かうのは、前者の被験者だ。
 五人いる体験入所者を三組に分け、それぞれ被験者の元へ向かう研究員についていくことになる。
 レンはファルと二人、エルジュの組に入ることとなった。
 他二班が出発し、レンたちも目的地へ足を向ける――が、その前に、エルジュがこちらを振り返った。
「レン、貴方はくれぐれも出先で、はしゃがないように」
 そう釘を刺すと、彼は踵を返してしまう。
 ぽかんとしたままのレンは、その背中をしばし見つめて、次いで同じく呆気に取られるファルの方を見た。
「……なんで、俺だけぇ?」
 まあ、ファルは基本大人しいので、分からないでもないのだが……。
 レンはどこか納得いかない顔で首を捻りながらも、慌ててエルジュの後を追ったのだった。

2025/09/20 00:00:00

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