初稿置き場
#玉座の憧憬
#玉座の憧憬_本編
14
セレンはふっと目を開いた。
だが周囲は真っ暗で、星の瞬きも蝋燭の仄かな明かりも何も見えない。
どこまでも闇が続いていて、そんな黒一色の世界にセレンは座り込んでいた。
ここは、どこ……?
きょろきょろと首を巡らせて、ふとこんな闇の中にもかかわらず、自分の姿だけははっきりと見えることに気付いた。
自分の手を握って、開く。
何か、違和感を覚える。
だがそれの正体は判然としないまま、セレンはその動作を繰り返していた。
『――セレンティーネ』
不意に響いた女の声に、顔を跳ね上げる。
「あ……」
そこには、自身とよく似た銀髪をたなびかせる女が立っていた。
彼女はこんな顔をしていただろうか。
もう記憶も朧げで、よく思い出すことができない。
それでも、セレンにはこの女が誰か分かっていた。
「……母様」
呟いた声に反応してか、女――母の目がギョロリとこちらを睨む。
セレンは床に座り込んだまま、恐ろしい形相の女を見上げる。
『お前は何をしているの』
「え……」
暗く沈んだ声に、身を竦ませる。
『こんな僻地で何をしているのかと、聞いているのよ!』
怒声に身体が震えた。
ああ、そうだ。母は時折こうして金切り声を上げることがあった。
それが幼いセレンには、とてもとても恐ろしくて――。
『お前は王の子なの! いずれ、王になるの! 全ての頂点に!! お前はこんな場所で埋もれるべき人間では――』
「でも、母様……」
『母上とお呼びなさい!!』
厳しい一喝に、セレンは俯いてぎゅっと目を瞑った。
小さな手を地面の上で握り締めて、じっと耐える。
『お前はやれば出来るのよ。あの卑怯な女狐の息子になど、負けはしないわ……』
「……はい、母上」
もう、顔を上げて母の顔を見つめ返すことすら、出来そうもなかった。
2025/08/22 00:00:03
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#玉座の憧憬_本編 14
セレンはふっと目を開いた。
だが周囲は真っ暗で、星の瞬きも蝋燭の仄かな明かりも何も見えない。
どこまでも闇が続いていて、そんな黒一色の世界にセレンは座り込んでいた。
ここは、どこ……?
きょろきょろと首を巡らせて、ふとこんな闇の中にもかかわらず、自分の姿だけははっきりと見えることに気付いた。
自分の手を握って、開く。
何か、違和感を覚える。
だがそれの正体は判然としないまま、セレンはその動作を繰り返していた。
『――セレンティーネ』
不意に響いた女の声に、顔を跳ね上げる。
「あ……」
そこには、自身とよく似た銀髪をたなびかせる女が立っていた。
彼女はこんな顔をしていただろうか。
もう記憶も朧げで、よく思い出すことができない。
それでも、セレンにはこの女が誰か分かっていた。
「……母様」
呟いた声に反応してか、女――母の目がギョロリとこちらを睨む。
セレンは床に座り込んだまま、恐ろしい形相の女を見上げる。
『お前は何をしているの』
「え……」
暗く沈んだ声に、身を竦ませる。
『こんな僻地で何をしているのかと、聞いているのよ!』
怒声に身体が震えた。
ああ、そうだ。母は時折こうして金切り声を上げることがあった。
それが幼いセレンには、とてもとても恐ろしくて――。
『お前は王の子なの! いずれ、王になるの! 全ての頂点に!! お前はこんな場所で埋もれるべき人間では――』
「でも、母様……」
『母上とお呼びなさい!!』
厳しい一喝に、セレンは俯いてぎゅっと目を瞑った。
小さな手を地面の上で握り締めて、じっと耐える。
『お前はやれば出来るのよ。あの卑怯な女狐の息子になど、負けはしないわ……』
「……はい、母上」
もう、顔を上げて母の顔を見つめ返すことすら、出来そうもなかった。