初稿置き場

#夢見る少年と未羽化の蝶
#夢見る少年と未羽化の蝶_二章 20


 王都から郊外の町へ乗合馬車で二日。
 そこから更に徒歩で半日ほど歩いた場所に、目的地がある。
「長閑なとこだなー」
 レンはファルの隣を歩きながら、田園風景の広がる辺りをきょろきょろと見渡した。
「綺麗だろ。でも、頻繁に来るにはちょっと遠い」
「たしかに」
 肩を竦めるファルに、レンはくすと笑う。
 ファルの両親は、息子のアカデミー入学に合わせて、町中からこの場所へ移り住んだという。ファル自身も数えるほどしか来たことがないようだが、現在両親が穏やかに暮らす場所を愛しているのが見て取れた。
「……ファルは、卒業したらこっちに行くのか?」
 今は毎日顔を合わせているが、アカデミーを出てしまえばそうはいかないだろう。だが、住む場所までこれほど大幅に離れてしまえば、一層会うことは難しくなる。
 その事実に寂しさを覚えて思わず訊ねると、ファルはきょとんとした顔をした。
「いや……。まだはっきりとは決めてないけど、多分王都を出ることはないよ」
「あ、そなの?」
「ああ。だって――」
「『だって』?」
 続きを促すが、ファルは口を噤み首を振った。
「いや……、その。なんていうか、仕事も多いし?」
「まあ、そうだな」
 王都はもちろん国一番に栄えた場所なので、村落に比べれば職種も求人も豊富なのは間違いない。
 どことなく歯切れの悪い物言いを不思議に思いつつも、レンは納得して頷いた。
「俺としては、ファルが近くにいてくれんの嬉しいよ」
 にぱっと笑ってそう言うと、ファルはきょとりと目を瞬かせた後、視線を逸らして溜息をついた。
「……レンのそういう所、ほんと」
「何?」
「…………なんでもない」
 ファルは何故かもう一度溜息をつくと、顔を上げて今度は明るい調子で言った。
「それより、予定より少し早く着きそうなんだ。近くの川でも散策してから行かないか?」
「え、いいのか!? ほら、王都ってやっぱし緑が少ないじゃん? 俺、こういうとこで前から遊んでみたかったんだよなぁ」
 うきうきの隠せないレンに、ファルもくすりと笑う。
「じゃあ決まりだな」
「おう!」

2026/08/15 13:11:58

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