ロアン様へ
最近は少し、昔の事を思い出すことが多くなりました。あなたにも、そんな時はあるでしょうか? 思い出すのならば良い記憶の方がいいと、つくづく思います。
そういえば。わたしの過去の話を聞きたいと、いつかの手紙で仰ってくださってましたよね。
少し長くなりますが、聞いてくださいますか? あまり楽しい話ではないので、ご容赦ください。
わたしは、ご存じの通りルフュー伯爵家の長女として、生を受けました。
ですが、きっとこれもご存知かと思いますが、わたしは愛情深い中では育てませんでした。母はわたしに興味がなく、父はわたしが嫌いです。
今思うと、婚礼の際に家族を呼ばないでいいようにしてくださったのは、あなたの配慮だったのではと思うこともあります。もしそうならば、こんなに嬉しいことはありません。
話を戻しますね。
わたしは、そんな中で育ちましたが、妹は違いました。
父にも母にもよく似ていたエリーゼは、彼らをとても満足させたようで、エリーゼは二人に溺愛されています。わたしの目から見ても、彼女はとても美しいですから。
私たちはあらゆる所が違いました。あちらからは、おそらく嫌われているのですが、わたしは多分、彼女のことを嫌いではありませんでした。
ただ、自分とあまりにも違って、羨ましくて。だから苦手に感じているのだと思います。
わたし達はお世辞にも仲の良い姉妹とは言える仲ではありません。
ですが、思えば彼女はわたしに対し、これといって何かをしてきたわけではなかったのではないか、そんな風に思うことが増えました。
これは、家を出たからこその気付きのような気がします。
ああ、過去の話、と言っておきながら、最近の気付きについての話になっていたような気がします。申し訳ありません。
気づきと言えば、庭の夏の花が順々に咲いて、目を楽しませてくれています。
そちらはいかがお過ごしでしょうか。またお聞かせくださると嬉しいです。
それでは。
ネリー