7章王都での邂逅
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王都での用事を急いで済ませたロアンは、ようやくノールヴィリニアへの帰途を辿っていた。
最後に聞いたエリーゼの言葉が今も頭から離れない。
自分は、彼女を大事に出来るだろうか。家族からもらうはずだったものまで、埋めても余りあるほどのものを与えることが、本当に。
戦地に届いた手紙は、今も鞄の中にある。混乱の最中すぐには届かなかった彼女からの心配の手紙も、後で全て受け取って目を通し、どれほど不安にさせたのかを嫌というほど思い知らされた。
自分は、ネリーに気苦労をかけてばかりだ。
この一年弱の間に、ロアンは様々なものを彼女からもらった。他愛のない話になごみ、辛い時には支えとなった。彼女のあたたかな手紙を読んでいるだけで荒んだ心が落ち着いた。
しかし自身は、そんな彼女が一番大変な時に、傍にいることすらできなかった。
「ネリー……」
戻ることが彼女の幸せになるのか、何度も考えた。しかし、いつも結論は同じだった。
会いたい。
手紙に乗せるしかなかった想いを、ようやく口に出して言える。
帰らないという選択など、どうあっても出来ない。
「もうすぐだ、ネリー」
ロアンは見えてきた屋敷の、その玄関先に人影を見つける。
そして、いつかのように名前を呼んだ。
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