6章想い繋がる心

 ネリーは驚いて、声の聞こえた方へ顔を出した。

 そこには、小走りに駆け寄ってくるレイブスがいる。何か起こったことは疑いようもなく、ついに死体でも見つかったのかと、つい悪い予感に駆られた。

 しかし、彼の表情に暗さはなく、それは杞憂であるようだった。

「お手紙です、奥様」

 レイブスが握っていた、小さな紙片を渡される。

 何が書かれているのか。

 悪い知らせではないだろうと分かっていても、不安だった。

 ネリーは二つ折りになったそれを、震える手で開く。

 その文字が目に入った瞬間、口元を押さえた。

 ――戦は終わった。すぐ戻る。

 そう書かれた紙には署名も何もなかったが、ネリーがその字を間違えるはずがなかった。

「ロアン……っ」

 ほろりと涙が零れた。

 彼は、生きている。

 つい最近書かれたと思われる真新しい紙が、それを示していた。

「レイブス、みんなにも伝えてきて」

「はい」

 久し振りに見るレイブスの満面の笑みに、ネリーも自然と笑みが零れた。

「ああ、奥様。その前にこちらも」

 そう言って差し出されたもう一通の手紙は、擦れたような汚れとよれたような皺があり、随分長い間を旅してきたようだ。

「かなり前に出されたものが、戦時の混乱で上手く届かなかったようです」

 封筒の端には「ロアン」と見慣れた署名があった。

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