5章あなたへの誓い
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ネリーが最後に読んだのは、ロアンが旅立ってから一番はじめに届いた手紙だった。
今見ると文がとても固い。でも、精一杯の思いやりを感じる。
「ロアン……」
これまで届いた何十通もの手紙たち。そのどれにも、彼からの労わりと心配の言葉があった。
――私は、必ずノールヴィリニアへ帰る。
一番はじめに彼が告げた約束。
それをあの方が破ってしまうとは、思えなかった。
「……あなたを信じてもいいですか」
あなたは、必ずわたしの元に帰ってくると。
あなたも、わたしを大切に思ってくれていると。
「ロアン……。わたしに勇気をください」
ネリーは彼の署名に口付ける。
「わたしは、あなたの妻。それに恥じない行いをすると、ここに誓いましょう」
涙を拭ったネリーは、手紙をまとめて箱に仕舞うと、一つ笑みを残し部屋を出て行った。
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