第三部晴れ渡る国
終曲狂騒の果て
大干魃が後一歩のところで食い止められた年以降、毎年のように訪れていた大風がぴたりと止んだ。
そんな混乱も過去のものとなり、日常となったころ、「一ノ姫」の階位はついに廃止された。
事実上最後の「一ノ姫」となったラミア、また彼女とともに雨を降らせた楽士ルテスと、名も知られぬ妖精の少女は、その後表舞台に出てくることは二度となかった。
ラミアのあと、舞姫たちを束ね続けた舞姫レルカは、「一ノ姫」廃止に次ぐ混乱が落ち着いた後に、同郷の楽士と共に王宮楽団を去った。結婚のためだ。
また、同じ混乱の最中、楽団長であったエグゼルも、旧体制の解体と共にその座を後にして一般官職に身を落としたが、間もなく所帯を持った。相手の女は人前に姿を見せることこそなかったが、彼が幸せそうにしているのは、有名な話だ。
そして、そのエグゼルが後見していた少年がいた。
彼は舞に類稀なる才能を見せ、ついには男性初の舞姫――舞い手となってゆく。
姉を追ってこの世界に飛び込んだ、とは本人の談だが、その「姉」が誰なのかは、明かされていない――
―終―
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