あとがき

 はい、というわけで。10周年記念小説でした!

 お楽しみいただけましたでしょうか?


 もう少し、ウィル視点の話を入れても良かったのかな、とか思わないでもないですが、ややこしくなりそうだったので、ばっさりカットした結果、彼がどう思っていたのか、よく分からない結果に……。

 まあ、シエナのことを想っていたのは伝わるよね! ということで、割り切りました。

 細かい話をすると、夜の湖に来たウィルはシエナと認識して、シエナと話したくて、わざわざ足を運んだし、

 作中、唯一彼がシエナに「ロリーナ」と呼びかける夜会でのシーンは、彼女がロリーナの仮面をかぶれていないと気付いていたから、です。

 もう少し上手いこと説明できれば良かったのですが……。

 まだまだ、精進しなければならないですね。


 今回はあくまで、「シエナとウィルフレッド」の物語、ということに注力しましたので、あまり詳しくは書きませんでしたが、ロリーナとティニスの方にも、一応物語はあります。

 主に、ティニスの方に。

 彼がエムロディア家から王都に行ったあと、すぐに城勤めしてたり生活基盤が整っていたりするのは、その辺りの作中では明かしていない設定のせいなのですが……。

 というわけで、ぐだぐだ説明するよりも、なんちゃって次回予告〜。



***



かつての大国は、混迷を極めた末に滅び去った。

王族も、貴族も、民も、傷付き苦しんで、死に絶えていく――。

しかし、男の父は国家の再建という夢に憑りつかれていた。


愚かなこと。


そう言いながらも、男は父を裏切ることはできない。


――ティニス殿下が、生きておられると?


もたらされた報は、一人の少女の行く末を歪めていく――




少女は言った。


あなたはどうして、わたしを……。


汚濁に塗れた少女は、絶望の中で光を見る。


君がほしいんだ、愛しい私の姫君――。


しかしその希望は全て、男の謀りごとだった。


あなたを、信じていたのに……!


男の嘲りが胸を潰す。


嘘じゃないさ。私は君をこんなにも、あいしている。


少女は泣いた。男の、心にもない言葉に。


それでも――


わたしは、あなたを愛さずにはいられない……。


奴隷に身をやつされた少女は、

いずれ亡国の王女となる運命が待っていた。



***



 ……というのを、15周年で覚えてたらやります。


 補足しておくと、

 ティニスはシエナたちの暮らす国の、隣国の王子。しかし、その国は荒れに荒れていて滅亡寸前で、彼は亡命を決意します。

 母が身分の低い女性であったため、彼は殆ど公に顔を知られていませんでした。そのため、母の知り合いの伝手を辿った亡命先のエムロディア家から、王家と連絡を取り、騎士として仕えることになります。

 公的には、以前王を救った功労者として異例の取り立て、ということにして、騎士となりました。

 という、流れです。

 家も王家からの下賜で、使用人も王家の息がかかっています。監視(裏切らないか)と護衛(故国から命を狙われるかもしれない)のためです。

 まあ、こんな感じで、ティニスはここに来るまで色々大変でしたが、シエナたちの話には関係ないので、ばっさりカットされました……。


 そして次回予告の話は、ティニスとロリーナの娘の話になります。

 ティニス亡命から10年と経たずに滅亡した亡国を復興するため、何も知らないティニスの娘はその旗頭にされてしまいます。

 それを計画した男は、彼女が自分の意のままになるように、わざと攫わせ奴隷に落とし、さも救世主かのように演出して彼女を救出。

 そんなことは当然知らない娘は、彼に感謝して彼の言いなりになるのですが、ある時男の嘘に気付いてしまって――。

 です。

 覚えてたら書きます。


 というわけで、あとがきなのか予告なのかよくわからない感じになりましたが、これにて。

 10周年ありがとうございました!


2021年9月14日 桜 みゆき

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