ネリーへ
貴女の実家での暮らしを、私も知らないわけではありませんでした。
妻を誰とするかの決定を下す前、その女性がノールヴィリニアで、なにより私の妻として、暮らしてゆけるのかを精査する必要がありましたから。婚姻を結んだ時、お互い不幸にならないために。
その調査の過程で、貴女の境遇は知っていたつもりでした。
ですが、実際聞くのとでは印象がこうも違う。話してくれてありがとう。貴女は、貴族の娘として相応しくないのではと引け目に感じているようだが、そんな事は気にしなくていい。知らないなら学べば良いだけ。それを十分に満たすだけの力が、幸いにして私にはあるのですから。
これまで私は、こういった手紙を不得手としてきたのですが、文面でも、きちんと伝えることができる。その事に驚いています。
貴女と満足に会話すら出来ぬままでしたが、このようなやり取りもあるのですね。
ありがとう。貴女との繋がりに感謝を。
では、身体に気を付けて。
ロアン
Copyright (C) Miyuki Sakura All Rights Reserved.